IBMは先頃、IBM社内でのアナリティクスとビッグデータの取り組みについて紹介するレポートをアナリスト向けに発表した。このレポートは、アナリティクスをビジネス価値に変えるという同社の組織的な取り組みの過程と、その過程から得た教訓に焦点が置かれている。IBMは、ほかの組織でもビッグデータアナリティクスを最大限に活用しようと奮闘している例として、ビッグデータを付加価値のある情報へと変える場合の課題について重点的に紹介した。
IBMはレポートで次のように書いている。「データに基づくアナリティクスは、クライアントの嗜好を明らかにし、運用コストを削減し、マーケティング効果を高めることができる。しかし、アナリティクスを価値の獲得(投資対効果)につなげるのは容易ではない。優れたデータサイエンスは、あらゆるアナリティクスプロジェクトに必要な土台であるが、多くのプロジェクトではまだその可能性を十分に実現できていない。アナリティクスの価値は単に、取得するデータの量や多様性によってもたらされるものではない。現在、価値をもたらす重要な要素となっているのは、正確さ(信頼性)と速さ(行動に移すまでのスピード)である」
IBMは、ビッグデータアナリティクスから最大の価値を引き出すために重要な要素として、以下の4項目を挙げている。
- 土台を作る(最初から完璧とされることを目指すのではなく、受け入れられる可能性に基づいてデータソースを選択する)。
- 苦痛を和らげる(ユーザーが素早く理解し、それに基づいて行動することが容易にできるような適切な洞察を提供することにより、ユーザーがデータを理解し、それを使って作業する際の苦痛を和らげる)。
- 進行させる(アナリティクスを日常業務のワークフローに組み入れるところまで進める)。
- 改善を求める(ビッグデータおよびアナリティクスのプロセスの改善を求める。データをクレンジングして将来的なアナリティクスの新たなステージを発展させるために、フィードバックのメカニズムを組み込む)。
土台を作るのは戦略的なプロセスであるのと同時に、社内政治が関わるプロセスになる場合がある。ここではユーザーを巻き込み、取り入れるデータソースとして信頼できて正確であり、ビジネス上の価値があるとユーザーが思うものを選定する必要がある。しかし例えば、カスタマーサービス部門のユーザーと製造部門のユーザーとでは、顧客の不満や、製品の返品、製品の失敗に関するアナリティクスで「ベスト」なデータはどれかということについて、意見が一致しない可能性がある。特に、それぞれの部門が独自のシステムやデータを使用している場合には、そうなる可能性が高い。こうした状況では、たいていIT部門が「データブローカー」として、アナリティクスデータをどこから取り入れるのかについて、双方の意見を一致させなければならない。