大手マイクロプロセッサメーカーであるIntelは、長年の間、ハイエンドPCのケースに貼られた「Intel Inside」のロゴで知られてきたが、最近では競争の激しいモバイルデバイス市場でシェアを獲得しようと多額の投資を行っている。
同社は2014年に、パートナー向けのチップに奨励金を支払うことによって、モバイル向けマイクロプロセッサの出荷をテコ入れした(この奨励金は収益の控除項目として計上されている)。
Intelの2014年第3四半期の財務報告を見れば、この戦略がはっきりと見て取れる。同社のMobile and Communiction Groupの売り上げは100万ドルに過ぎなかったが、営業損失は10億4000万ドルとなっている。
当時、Intelの最高経営責任者(CEO)Brian Krzanich氏は、同社は第4四半期に1000万基から1200万基のモバイルプロセッサを出荷する見込みであり、通年では少なくとも4000万基に達すると述べていた。
Intelのシニアバイスプレジデントであり、Client Computing GroupのジェネラルマネージャーのKirk Skaugen氏は、米ZDNetに対し、「当社はモバイル市場でポジションを確保するために数十億ドルを失っていた。これは、ポジションを確立することが重要だと考えたからだが、これによって当社は、2014年に状況を一変させることができた」と語った。
この戦略は、Mobile and Communications Groupの会計上の損失につながったが、この投資は明らかに報われつつある。Skaugen氏は4月に、同社は4000万基という目標を大きく上回り、最終的には約4600万基のモバイルプロセッサが出荷されたことを明らかにした。
さらに、Intelの最高財務責任者(CFO)であるStacy Smith氏は4月に、同社はモバイル事業の収益性を8億ドル改善するという年間目標を順調に達成しつつあり、改善の大部分は「今年後半」に現れてくる見込みだと述べている。
Intelのモバイル市場での業績の好転予想が明らかにされたのは、同社が中国の深センにあるSmart Device Innovation Centerに1億ドルを投資すると発表してから1年後のことだ。
同社のこの取り組みは、少なくとも部分的には、中国市場で勢いを増している英国の競合企業、ARM Holdingsが製造するマイクロプロセッサとの競争を有利に戦うためのものだった。中国市場では、多くのスマートフォンメーカーがARMのチップを選択しているためだ。
ARMのエコシステムビジネスモデルは中国のモバイル市場で優勢に立っており、Skaugen氏が、Intelが成功するためには、中国でのエコシステム強化の取り組みが重要だと考えることは不思議ではない。
Skaugen氏は、Intelが新世代のAtom Xシリーズプロセッサ全体について、ODM(相手先ブランドでの設計製造)パートナーに提供できるターンキーソリューションを確立できたと考えている。この取り組みは、ARMに匹敵する充実したエコシステムを開発するためのものだった。
Skaugen氏によれば、止まるところを知らない勢いに見える中国テクノロジ市場は、このアプローチを非常に柔軟に受け入れているという。
「中国のテクノロジ業界エコシステムの助けになっているのはスケーリング、つまりわれわれがターンキープログラムサポートと呼んで提供しているものだ」とSkaugen氏は言う。「われわれは完全なレシピを提供している。基板からテスト、ソフトウェア、システム設計まで提供し、製品を素早く市場に出すことを可能にしている」