最近、マーケティングオートメーション(MA)という言葉を耳にする。見込顧客の管理を自動化し、有望なリードをマーケティング部門と営業担当部門双方で管理する手法のことだ。マーケティングオートメーションのクラウドによるソフトウェアで提供する企業が登場し始めており、ユーザーの注目も高まっている。
MAが注目される要因として、主にマーケティング部門のIT活用が複雑化してきたことが挙げられるだろう。従来のイベントやメールの管理、ホームページのトラッキング管理に加え、BIやCRMとの連携要請が高まり、さらに、SNSで得られる情報の管理業務も出てきた。多岐にわたるシステム活用を省力化したいというのがMAを導入する理由になる。
もちろん、MAはこうした作業の省力化を提供するだけでなく、マーケティング部門と営業部門、IT部門との連携を高め、業務プロセスをより効率化させて、実効性の高いリード獲得を素早く進めるというメリットがある。
簡単には製品やサービスが売れなくなった時代、新規、既存両方の顧客の中からニーズを拾い出し、商談発生率が高く具体的な売り上げに直結する相手を迅速に見出すことができなければ、成長は期待できない。
ただ、MAのような新しいマーケティング手法が着目され、多くのユーザーが続々とさまざまなツールを導入する一方で、企業のマーケティング課題の上位にいつもランクされるのは「マーケティングの成果が見えない」というものだ。
シャノン取締役 事業統括担当役員の東野誠氏
マーケティング成果の見える化に必要なのは、独自のKPI設定
「シャノン マーケティングプラットフォーム」というMAソフトウェアをクラウドで提供しているシャノン取締役 事業統括担当役員の東野誠氏は、次のように話す。
「当社が実施したアンケートでも、常に『成果が見えない』という課題は、上位にランクされています。では、成果を見える化するにはどうすればいいのか。やはり、独自のKPIを設定することが肝要です」
シャノンは、MAソリューションである「シャノン マーケティングプラットフォーム」を2011年から正式提供しているが、その以前からさまざまな顧客にプラットフォームを利用してもらっていた。このサービスは国内のマーケティング管理製品市場で5年連続トップシェアを獲得しており、年間継続しての利用者は700社に上るという。セールスフォース・ドットコムのAppExchangeに国内で初めて接続したサービスでもある。
東野氏が話す「独自のKPI」とは、マーケティングの施策の評価を各ユーザーの実情に合致した各プロセス、成果に対するスコアリング方法という意味だ。正確なスコアリングのルールを決め、それを自動的に管理するMAのツールを使うことで、今まで見えてこなかった課題が明確化されるという。
「例えば、顧客の興味の度合いをスコアリングするケースがあります。イベントでどのような講演、プレゼンに参加しているか、ウェブページのどの部分を頻繁に参照しているか、どんなPDFを最近ダウンロードしているかなどをMAで管理し、正確にスコアリングすることで、隠された、あるいは見えてこなかったニーズをつかむことができます。顧客は、サービスや製品の名前を具体的に上げて、『○○について教えてほしい』といったオファーを必ずしてくるとは限りません。もし、そういうオファーをしてきた場合は、すでにかなり情報収集をしていて、競合他社にも声をかけているかもしれません。それでは、セールス競争のアドバンテージは得にくい」
既存顧客でもともと重要なセールス先には、レベルの高い営業スタッフを十分に張り付けていて、潜在的なニーズも拾いやすい。しかし、見込顧客も含めたほかの顧客にこうした体制を取ることは、事実上不可能だ。そうした顧客に対しても、きめの細かい先手必勝の営業施策を可能にするには、MAによるスコアリングしか方法はないだろう。