ヴイエムウェアが「ハイブリッドクラウド」の普及拡大に注力している。なぜ、ハイブリッドなのか。同社が先頃開いた記者会見での説明をもとに迫ってみたい。
“One Cloud, Any Application, Any Device”を推進
「ハイブリッドクラウドを強力に推進していくという戦略は今後も変わらない」――ヴイエムウェアの三木泰雄 代表取締役会長は、同社が6月4日に開いたパブリッククラウドサービス「VMware vCloud Air」の機能強化などの発表会見でこう強調した。
会見に臨むヴイエムウェアの三木泰雄 代表取締役会長
vCloud Airの機能強化の内容については関連記事を参照いただくとして、ここでは、同社がなぜパブリッククラウドではなく「ハイブリッドクラウド」を前面に押し出すのか、という点にフォーカスしたい。
三木氏は会見で、その理由について次のように説明した。
「企業におけるこれまでのITに対するアプローチは、オンプレミスおよびアウトソーシングによって既存のアプリケーションを使い続けてきた。ここにきてパブリッククラウドの利用も増えてきているが、アプリケーションは新規のものを適用するケースが大半なのが現状だ」
「そこで私どもは、既存アプリケーションも新規アプリケーションも同一環境のもとで利用でき、しかもあらゆるデバイスにも対応したクラウドがこれから求められると考え、“One Cloud, Any Application, Any Device”というビジョンのもと、ハイブリッドクラウド戦略を前面に押し出した。その要となるのがvCloud Airだ」(図参照)
ヴイエムウェアが推進するハイブリッドクラウド戦略(出典:ヴイエムウェアの資料)
ハイブリッドに最適なVMwareプラットフォーム
なぜ、vCloud Airがハイブリッドクラウド戦略の要になるのか。それは、vCloud Airがオンプレミス環境で実績のある仮想化ソフトウェア「VMware vSphere」を基盤としているからだ。このため、すでにオンプレミス環境でvSphereを利用している企業は、これまでと同じ管理手法でクラウド環境を可視化、運用し、オンプレミスとオフプレミスの両環境に対応したクラウドの使い方ができるというわけだ。つまり、vCloud Airは、いわゆるVMwareプラットフォーム上のパブリッククラウドサービスなのである。
それが何を意味するのか。競合するパブリッククラウドサービスとどう戦っていくのか。会見後に三木氏を直撃してみたところ、こんなコメントが返ってきた。
「vCloud AirはvSphereユーザーにとって、既存のアプリケーションをクラウドへスムーズに移行できる最適な手段だ。これは、他のパブリッククラウドサービスの追随を許さないvCloud Airならではのアドバンテージである。クラウドサービス市場が今後さらに拡大していく中で、他のパブリッククラウドサービスと競合する局面もあるだろうが、確固たるアドバンテージを持つvCloud Airは今後さらに存在感を高めていくと確信している」
さらに同氏は、「vCloud Airの商談を通じて、ハイブリッドクラウドに対する顧客の期待がますます高まっていることを実感している。その期待に応えられるように、今後も一層、機能やサービスの強化に努めていきたい」と決意のほどを語った。
果たして、同社の思惑通り、ハイブリッドクラウドが多くの企業に広がっていくか。その動向は、クラウドサービス市場の勢力図にも大きく影響を及ぼしそうだ。