ファーストリテイリングとアクセンチュアは6月15日、都内で記者発表会を開催し、消費者向けサービスでのデジタル化事業で協業すると発表した。ファーストリテイリングは、全顧客の会員化を含め、リアル店舗とバーチャルの仕組みを統合し、顧客が場所や時間を問わない購買行動をできるようにする。
また、デジタルを含むIT改革を実施し、現状の小売業の定義にとらわれない新たな産業の実現を目指すとしている。将来的に合弁会社の設立を計画していることも明らかにした。
アクセンチュアは、ファーストリテイリングの取り組みをSCMやCRM、Eコマースシステムの構築や、そのクラウド化などにより支援する。また、ファーストリテイリングは社内システムの内製化を推進する考えで、人材育成や採用を含めてアクセンチュアがバックアップするとしている。
(左から)ファーストリテイリンググループ執行役員CIOの玉置肇氏、同代表取締役会長兼社長の柳井正氏、Accenture成長市場担当グループチーフエグゼクティブのGianfranco Casati氏、アクセンチュア取締役副社長 執行役員 製造・流通本部 統括本部長の江川昌史氏
ファーストリテイリングの最高情報責任者(CIO)を務める玉置肇氏は「われわれの課題は、ロイヤルティの高さにかかわらず顧客の顔が見えないこと。アクセンチュアと一緒にデジタル化を進め、全顧客を会員化したい。店舗と顧客をシームレスにつなぐためには会員化は避けて通れない」と話す。
具体的には「顧客の要望や趣向にあった商品や情報を時間や場所の制約なく届けたい」という。そのため、情報システムにより商品開発、計画、生産、物流、マーケティング、店舗、販売、リサイクルなどすべてのプロセスがつながるようにする。商品の企画、生産、販売までのプロセスの完全デジタル化とリードタイムの短縮など、さまざまな業務改革を実施する。
また、ファーストリテイリングのITエンジニアの内製化も、アクセンチュアが支援する。特にビッグデータ、クラウドベースのシステムを構築し、運用していける人材を見つけていきたいとしている。玉置氏は「クラウドとして指すのはインフラだけでなく、アプリケーションレイヤも含めたもの」と付け加えている。
アクセンチュアがファーストリテイリングのITコンサルティングを開始したのは2001年で、基幹システムを構築してきた。ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長の柳井正氏は「ファーストリテイリングの成功はアクセンチュアによる支援のたまもの」と述べた。
柳井氏は「商品の企画、生産、販売というプロセスの“際”というものが、グローバルの規模でまったくなくなる。同時にそれぞれがお互いの知見を編集していくような企業をイメージしている」という。従来の、製造業、卸売業、小売業といった業態の垣根を取り払い、顧客の利便性を最大限追求した組織を構築する考えだ。
競合企業について聞かれた柳井氏は「業態が同じとは限らない。消費者の財布は1つ。Nestleかもしれないし、Coca-Cola、P&G、Disneyかもしれない」とコメントした。
具体的な協業によるサービスについて、玉置氏は「今年をめどに顧客情報のデータベース化、買い回りの利便性を向上する施策を発表していきたい」と話している。