ユニクロを展開するファーストリテイリングが事業を拡大している要因として、グループ執行役員で最高情報責任者(CIO)の玉置肇氏は、世界中で新規出店を続けていること、デジタルイノベーションを手掛けていることの2つを挙げた。
6月2日に2日間の予定で開幕した「AWS Summit Tokyo 2015」の基調講演にゲストとして登壇した玉置氏は、勇気が必要ではあったとしながら、同社が基幹系システムを含めほぼすべてのシステムをAmazon Web Services(AWS)上に置く決断をしたことについて話した。
ファーストリテイリングのグループ執行役員でCIOの玉置肇氏
デジタルイノベーションとは具体的に、リアルの店舗とデジタルでのECの融合や、超高速サプライチェーンの2つを挙げている。この日は、スマートフォンを使ったマーケティング施策についても、写真を交えながら紹介した。
スマートフォンを使ってさまざまなマーケティング施策を実施している
ピーク時のキャパシティ予測は占いのようなもの
玉置氏が掲げるファーストリテイリングのIT戦略の柱は、すべてにおいてグローバルであること、端末を問わないこと(Device agnostic)、クラウドファーストであることの3つだという。
同社が処理するリクエストは月間で200億に上る。LINEなどを通じたプロモーションをスマートフォン向けに打ったりすると、時に1秒間で10万リクエストという膨大なトランザクションの処理に追われるという。
こうしたビジネス環境の中、トランザクション量に応じてキャパシティを自動的に調整するオートスケーリング技術は、同社がグローバルでビジネスを展開するうえで不可欠だとする。
「私も20年ITを担当してきたからわかるが、キャパシティのサイジングはとても難しい作業だ。コンシューマー向けアプリケーションのサイジング予測は占いのようなもの」(玉置氏)
キャンペーンなどで跳ね上がるトラフィックに対応するためにAWSのクラウド環境が必要という
2020年に世界で5兆円の売上高を見込んでいるというファーストリテイリング。パブリッククラウドサービスを提供する企業はMicrosoftをはじめほかに多くあるが、あえてAWSを選んでいる理由として「ラージコミュニティがあること」を挙げた。
「AWSはエンジニアや開発者が自発的なエコシステムを構築する土壌がある。そこからオープンソースなど活用できるさまざまなものが生まれる」
サーバリソースを提供するEC2、ストレージのS3だけでなく、AWSが展開するさまざまなサービスを今後導入していく予定という。さらに、今後の展開予定として「24~36カ月をめどに基幹系システムのほぼすべてをAWS上に移し替える」と明言した。
関係者向けリップサービスとも思われるほど、AWS推しだった玉置氏。最後に、この日最も力を入れて強調したのは「一緒に働く仲間を募集しています」という部分。技術者不足が叫ばれる昨今の状況は、ユニクロも例外ではないようだ。