Edward Snowden氏が2年前に米国政府による大衆監視活動を暴露したことは、長期的に見た場合、米国のテクノロジ業界にどのような影響を与えたのだろうか。
提供:ITIF
非営利シンクタンクである情報テクノロジおよびイノベーション財団(ITIF)は、2015年6月に発表した「Beyond the USA Freedom Act: How U.S. Surveillance Still Subverts U.S. Competitiveness」と題するレポートの中で、米国政府は問題への対処を怠ることによって、「国家安全保障環境の改善という曖昧で説得力のない目標を理由に、米国のテクノロジ産業の健全な競争力を犠牲にする」リスクを冒していると論じている。
このレポートの著者であるDaniel Castro氏とAlan McQuinn氏は、米国の政策立案者やリーダーが真剣に考えてみるべき問題を提起している。
将来、歴史家が米国のこの時期について書こうとするとき、そのテーマの1つが、なぜテクノロジ分野で米国が他国に対するリーダーシップを失ったか、というものになる可能性は十分にある。そして、その際に原因として指摘される要素の1つには、米国の外交政策において、国家安全保障に関する利害が長期間にわたって米国の産業および商業における利害よりも優先されていたことが間違いなく挙げられるだろう。
米国政府が、監視政策の改革や、透明性とデータセキュリティ推進を怠っていることで、米国の貿易とテクノロジ企業はリスクにさらされている。ITIFはこのレポートの中で、米国家安全保障局(NSA)の監視活動スキャンダルが米国企業に与えている影響と、保護主義の台頭について説明している。
米国企業への悪影響
Snowden氏の暴露情報が初めて報じられた直後である2013年8月に、ITIFは米国のクラウドコンピューティングサービスプロバイダーが220億ドルから350億ドルの経済的損失を被ると見積もっていた。ITIFによれば、それ以降の2年間、米国政府の監視に対する不信が原因で、米国のテクノロジ企業の業績不振が続いているという。ITIFはレポートの中で、2013年以降発生した長期的な影響による損失は、350億ドルを「大きく上回る可能性が高い」と結論づけている。
信頼の欠如が強まっていることが、英国やカナダを含めた親しい同盟関係にある国との貿易にも悪影響を与えている。2014年1月の調査では、この2国の調査対象者の25%が、NSAの監視問題が原因で、自組織のデータを米国国外に引き上げる意向であることが明らかになっている。