海外コメンタリー

テクノロジ産業に影落とす米政府の監視活動--シンクタンク報告 - (page 2)

Brian Taylor (Special to TechRepublic) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2015-07-13 06:30

 米国の大手企業が悪影響を受けている事例には、他にも次のようなものがある。

  • Salesforceは、ドイツの大手保険会社との顧客データベース管理契約をキャンセルされた。同社は、Snowden氏よる暴露直後の会計四半期に、短期的な売り上げの減少を経験し、1億2400万ドルの赤字を計上した。
  • Ciscoも、NSAが秘密裏に同社のハードウェアに監視ツールを設置した報じられたことで、中国、ブラジル、ロシアで売り上げが減少した。同社の最高経営責任者(CEO)であるJohn Chambers氏は、同四半期の業績報告で、NSAの問題が中国での売り上げ減の一因だったと述べている。
  • Qualcommは、中国事業の成長を見込んでいるものの、NSAによる監視が、同国での事業の障害になっていることを認めている。
  • Apple、Cisco、Citrix Systems、McAfee(Intel)は、同じく中国で、国営企業の調達参加業者リストから除外された。これは、ITIFが指摘している、NSAの監視問題以後に米国以外の国で台頭している保護主義の影響だ。
  • スパイ活動に対する懸念から、Boeingはブラジルで、Verizon Wirelessはドイツで、それぞれ政府調達の対象から外れた。

米国以外の国々で強まる保護主義

 ITIFはこのレポートの中で、Rackspaceが2012年にオーストラリアでデータセンターを建設した後に、米国政府がオーストラリア市民を監視する手段として愛国者法を使用する可能性があると同国の競合企業が主張した経緯について説明している。このオーストラリア企業はまた、国会議員に対して、同社がスポンサーとなって作成したレポートを使って、国外のクラウドプロバイダーに制約を設けるようロビー活動を行った。オーストラリアでは、2013年に米国のスパイ活動が暴露された後、監視活動への懸念から生まれた保護主義の動きが次第に強まっている。

 欧州では、NSAの活動への反動として、データを国内にとどめることを求める法律や、欧州のプロバイダーに有利な調達規制が求められるようになっている。またドイツとフランスは、独自ネットワークの構築を始めた(ドイツではSchlandnet、フランスではSovereign Cloud)。さらに、フランスは2つのスタートアップ企業に2億ドルを投じて、独立した国内インフラを作ろうとしている。

 オーストラリア、中国、インド、ロシアは、国民の個人情報を国外に持ち出すことを禁ずる法律を制定したが、これは実質的に国際的なクラウドプロバイダーがこれらの国内にデータセンターを建設することを義務づけるものだ。AppleとSalesforceは、世界的に展開している事業を支え、批判に対応するために、すでに米国外でデータセンターを建設している。

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