また、IBMの「打ち合わせ準備のための打ち合わせ」と呼ばれる慣習は、当時のLenovoの役員たちを驚かせた。実際の打ち合わせをスムーズに進行させるために、司会担当者が事前に個々の参加者と直接顔を突き合わせて問題を解決しておくという米国流のやり方に、中国側は面食らったのだ。Qiao氏は、中国側にはそのような慣習がなく、実際の打ち合わせが問題解決のための議論を始める場となっていたと述べた。
同氏は「このため、われわれはブレインストーミングを実施して、新しい共通ルールを作った。われわれは米国人従業員にゆっくりと話してもらうようにする一方、中国人従業員には自らの意見を口に出すよう奨励した」と述べた。
今ではゆっくりと話し、意見を口に出すというのが全社の共通ルールとなっている。打ち合わせの前に知っておくべき情報や問題は、必ず24時間前までに共有される。また、お互いがより良く理解し合えるよう、Qiao氏と人事チームがケースバイケースで個別対応を行ってきている。
これらのルールの制定後、コミュニケーションはスムーズになり、作業のめどがつくようになった。こうした過程を経て、Lenovoはようやく戦略や製品、イノベーションについて検討できるようになった。
Lenovoが文化的な障壁を積極的に壊すようになって7〜8年が経過した。その結果、Qiao氏の言葉を借りると「目に見えて改善された」という。また同氏は「これは1日で成し遂げたことではない。長い時間がかかる。そしてその取り組みは今でも続いている」と述べた。
同氏によると、信頼が築き上げられた後、偏見のない文化が醸成されていったのだという。
地域担当マネージャーの任命からもオープンな文化の慣習が見て取れる。例えば、同じく中国企業のHuaweiは海外の地域担当幹部に中国人を選ぶのが通例だ。しかしLenovoは常に、海外事業の運営を指揮する幹部に現地国の人間を任命している。
「Lenovoがトップ、あるいは2位、3位を走っているかどうかは分からないが、Lenovoは(文化を変革したことで)世界的な企業の仲間入りを果たせたと考えている。今、中国や米国、インド、イタリア、韓国といった国にあるLenovoの支社を訪れてもらえれば、中国文化が幅をきかせる企業にはなっていないと分かるはずだ。買収が実施され、文化を変えていこうとした時には、平均以下だったと考えている。しかし今や、トップに近い位置につけている」(Qiao氏)