LenovoがIBMのPC事業を引き継ぎ、10年が経過した。Lenovoで人事担当シニアバイスプレジデントを務めるGina Qiao氏によると、同社は現在、モバイル分野に注力するなかで、西洋と東洋の従業員を調和させることによって築き上げた世界に通用する文化を刷新しようとしているという。
複数の中国企業が脚光を浴びるようになり、LenovoやHuawei、Xiaomiといった企業は今やIT分野のオマケ的存在ではなくなっている。これらの企業は、PC分野にとどまらず、エンタープライズソリューションやモバイルといったあらゆる分野に進出しており、動きの激しいIT分野において極めて短い期間で、重要な役割を演じるようになってきている。
これら3社のうちで最も歴史の古いLenovoは、製品の出荷量と海外での認知度という双方の点で最初に国際的企業と呼べる存在となった。同社が2005年にIBMのPC事業を買収した際には「蛇が象を飲み込んだ」とやゆされたが、この買収により知名度は急上昇した。
Lenovoはその後、PC製品の販売でHewlett-Packard(HP)やDellといった老舗のライバル企業を追い抜くまでに成長したという点で、この蛇は象を飲み込んだだけでなく、うまく消化したと言ってもよいだろう。そしてLenovoは現在、最近買収したIBMのx86サーバ事業とMotorola Mobilityの双方を消化しようとしているところだ。
Qiao氏によると、Lenovoが老舗のライバル企業、そして他の中国企業よりも抜きん出ているのは、新たな企業文化のおかげであり、その大半はIBMのPC事業を買収した時の経験から生み出されたのだという。同氏によるとその企業文化とは、西洋と東洋の文化が互いに浸食しあうことなくうまく融合した、あるいは少なくともそうなることを目指したものだという。
西洋文化と東洋文化の溝を埋める
2005年の買収当時を振り返ったQiao氏によると、最初のうちはLenovoも、他の一般的な企業買収の後によく見かけるような事業統合というプロセスに注力していたという。
同氏は「われわれは買収後、どのように戦略や製品、イノベーションを定義していくのかとともに、どのように従業員をつなぎ止めていくのかについて構想を練るところから始めた」と述べた。
両社に対する初期の分析では、少なくとも紙の上ではいずれも似たような価値と作業文化を共有していたため、統合はスムーズに進むと期待されていた。
Lenovoの人事担当シニアバイスプレジデントGina Qiao氏
提供:Lenovo
しかし現実は違った。Lenovoの従業員とIBMから移ってきた従業員の間に生じる誤解がもとで、打ち合わせが進まないという状況が発生したのだ。
統合のペースは低下した。イライラするうちに2年が過ぎた頃、議論が必要なのは戦略や製品についてではないと分かってきた。その答えは文化にあった。そして文化の基礎は信頼にある。
同氏は「買収後、Lenovoではさまざまな国から来た、さまざまな背景を持つ、さまざまな言語を話す人たちが働くようになった」と述べ、「東洋人は物静かかつ謙虚で、意見を口にする前に熟考する傾向がある。西洋人はよりオープンかつダイレクトで、考えを共有することを好む傾向がある。そして考えを共有する際には、その場でフィードバックを求めようとする」と続けた。
打ち合わせの場では、こういった違いが従業員間での誤解を生む土壌となり、信頼の醸成や、新しい文化を創り出す能力に悪影響を与えていた。
給与体系の違いでも不協和音が生み出されていた。Qiao氏が驚いたのは、IBMでは給料こそ高いもののボーナスが少ないという点だった。Lenovoでは給料に比して、業績に依存するボーナスの割合が高くなっていた。こうした給与体系の違いはLenovoとIBMの2つの文化の相違を克服するうえでの障害ともなった。