PC市場は下降線をたどっており、IDCやGartnerの最新データもPC販売が冬の時代にあることを裏付けている。そんななか、「Windows 10」がまもなく登場する。この新OSはPC市場に春をもたらすのだろうか?
ひとことで言えば、それは難しいだろう。
「Windows」ファンに向けた華々しいファンファーレとともにWindows 10の提供が開始され、PC市場に活気がもたらされるという期待もあったが、IDCのデータによると2015年第2四半期のPC出荷台数は6610万台と前年同期比で11.8%低下し、Appleを除くすべてのベンダーは勢いを失っている状況だ。
PC販売低下の原因が「Windows XP」サポート終了の反動や為替変動にある可能性だけでなく、Windows 10の登場に先立った買い控えにあるという可能性も捨てきれない。いずれにせよ、投資家筋はPC市場に大きな価値を見出していない。米国の金融機関Wells Fargoによると、Hewlett-Packard(HP)の株価水準は、同社の利益の10%以上を占めるPC事業に投資家らが価値を見出していないと言ってもよいほど割安になっているという。
過去の常識を当てはめてみた場合、Windows 10はPC市場の安定にある程度寄与するはずだ。また、サプライチェーンにWindows 10搭載機器が一定数確保されるのは間違いない。
しかしMicrosoftは、既存ユーザーが気軽にアップグレードできるようにするという、将来におけるサービスとしてのWindowsの布石とも言える戦略に出ている。
Intelが米国時間7月15日に発表した第2四半期の決算を見ると、クライアントコンピューティンググループの売上高は前年同期比で14%減少している。通期の売上高は前年比で約1%減になる見通しだ。決算発表に先立ち、JMP SecuritiesのアナリストAlex Gauna氏は次のように述べていた。
われわれは、PC分野の停滞と、Windows 10の登場に向けた勢いの弱さ、サーバ分野の低調さという複合的な要因により、Intelが第2四半期、売上高の増加という市場の期待に応えられず、通期の売上高見通しを前年並みから1桁台前半の減少へと下方修正すると予想している。
ここでWindows 10の登場に向けた勢いというものが実際に存在するのかという点を考察したい。
PCメーカーは新しいWindows 10を積極的に宣伝していない。その理由としてまず、Windows 10が「Windows 8」で指摘の多かった箇所を修正した製品だという点を挙げることができる。また、Microsoftが無償と言ってもよいアップグレードパスの提供に踏み切ったため、多くのユーザーは新規PCを購入せずにアップグレードするという点を挙げることもできる。