巧妙化する攻撃から被害を防ぐにはマインドセットの転換が必要:RSA - (page 2)

鈴木恭子

2015-07-23 17:53

警戒すべきは「偉い人のアカウント」

 中でもYoran氏が重要だと力説するのが、「可視化」と「認証とID管理の徹底」である。

 かねてからRSAでは、連続的なフルパケットキャプチャとエンドポイントへの侵害分析を平行させ、その感染経路も追跡して可視化する必要性を説いている。同社ではネットワークのパケットをキャプチャして可視化する「RSA Security Analytics」、エンドポイントを可視化するフォレンジックツール「RSA ECAT」などを提供している。

 何が起きているかを正確に判断するためには、システム同士の通信を可視化し、内容そのものを把握する必要がある。このレベルの可視性が担保できなければ、「ネットワーク監視対策ソリューション」とは言えないというのが、Yoran氏の見解だ。

 「現在のセキュリティチームが犯す最大のミスは、インシデントの範囲を過小評価し、攻撃の全容を理解しない段階で侵害されたシステムのみ対策して終わった気分になっていることだ。攻撃を完全に理解しなければ、ネットワークから攻撃者を締め出すことができない。それだけでなく、(こうした中途半端な対策は)防御の手の内と対策レベルを攻撃者に“披露”し、それを回避してシステムを攻略するにはどうすればよいかを指南しているようなものだ」(Yoran氏)

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 「認証とID管理の徹底」は、デバイスの多様化やクラウドサービスの利用など情報にアプローチする接点が増加するに従い、重要度が増していると指摘する。

 ID管理は、誰が何にアクセスするべきか理解する「ガバナンス」、誰がどの情報にアクセスできるかを制御する「アクセス権」、さらに組織変更など環境によって変化するアクセス権を管理する「ライフサイクル」の3要素に帰結する。「これらを正しく管理することで、データ侵害のほとんどは防げる」とYoran氏は力説する。

 同氏がID管理の重要性を説くのは、内部犯行者によるデータ侵害の多さであるからだ。先出の「データ漏洩/侵害調査報告書」によると、機密データ漏洩の攻撃手口で一番多かったのは、ウェブアプリケーション攻撃であり、そのうちの95%は、攻撃者が認証情報を盗み、“正当な認証手段を用いて”正面から侵入する手法だったという。

 Yoran氏は、「その人を信用しているから、その人のアカウントが通常とは異なる不可解な振る舞いをしていたとしても信用するというのは間違いだ。攻撃者は管理者権限があるアカウントや経営上層部のアカウントを狙う。最も疑ってかかるべきは経営上層部のアカウントだ」と指摘した。

 そのうえでYoran氏は、「上記の5つのアプローチを採用することで、脅威は確実に低減できる。セキュリティのパラダイムシフトに伴い、われわれも長年続けてきたアプローチを全面的に再設計している。われわれも技術の問題ではなく、考え方の問題として脅威に対峙している」と強調した。

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