IDC Japanは8月11日、4月に実施したユーザー動向調査「2015年 国内クラウド調査」の結果を発表した。それによると、2015年現在のIT戦略にクラウドが影響を与えると考える企業は44.8%にとどまり、2年後の2017年のIT戦略でもクラウドが影響を与えると考える企業割合は50.1%となった。
国内市場でクラウドは広く普及し始めており、クラウドが登場して以来ITを大きく変革すると言われてきたが、クラウドがIT戦略に影響を与えると考える企業は、決して多いものではなかった。

(IDC提供)
パブリッククラウドサービスやプライベートクラウドなど、何らかのクラウドをすでに導入、利用中の企業では、クラウドが現在のIT戦略に影響を与えると考える企業の割合は78.7%(「強く影響」35.6%、「少し影響」43.1%)だった。2年後のIT戦略では、クラウドが「強く影響」を与えると考える企業割合は48.5%。これらのことは、実際にクラウドを利用したことでクラウドの価値を認識する企業が多いことを示すと説明。IT戦略に対するクラウドの影響度が年々高まっていくことを表しているという。
クラウドは、高い技術力を有する企業や変革を求める先駆的な企業向けだけでなく、多くの一般的な企業が利用するものへと発展しており、急速にユーザー層を拡大している。しかし、企業のクラウドあるいはIT戦略で「先駆的な企業」と「一般的な企業」の間には溝が見られるのが実情と説明する。
クラウド導入の目的が先駆的な企業では「ITや業務の効率化」と「事業強化」を同時に検証しているのに対し、一般的な企業は「効率化」のみ、あるいはソーシャルメディアやモバイルへの対応といった個別案件としての「事業強化」だけとなっている。このような溝は、時間の経過とともに埋まっていくものの、一般的な企業に対して、効率化だけではないクラウドの価値をベンダーは訴求し続ける必要があるといえる。
効率化だけではないクラウドの価値の訴求では、社会や企業活動のデジタル化に対応した「IT(クラウド)を使った事業強化」が重要となってくると提言する。
現在、クラウド市場では「パブリッククラウド」「プライベートクラウド」といった配備やサービスモデルに焦点を絞り、コストやセキュリティといった要件から「適材適所」でクラウドを選択し、連携させるハイブリッドクラウドが高い注目を集めている。もちろん、配備モデルの検証は重要だが、それだけでなく、「業務の効率化」と「事業拡大」の統合や連携を考慮したハイブリッドクラウドこそが、価値を創造する新たな基盤となると主張している。
こうしたことから、同社ITサービス リサーチマネージャーの松本聡氏は、「ベンダーにとって、真のハイブリッドクラウドを実現するソリューションの整備が喫緊の課題である」と分析している。