米Googleが8月10日、持ち株会社の新設を柱とする大がかりな組織再編を発表した。筆者が注目したいのは、企業向けクラウドサービスの行方だ。果たして分社化される可能性はあるか。
「第2の創業」に挑む姿勢を打ち出したグーグル
Googleの発表によると、新たに持ち株会社「Alphabet」を設立し、現在のGoogleはその傘下でインターネット検索と広告事業を中核とする事業子会社となる。一方、Googleがここ数年投資を拡大してきた自動運転車や先端医療などの新規事業も別の事業子会社として持ち株会社の傘下に入る形になる。
持ち株会社への移行は今年内に完了する見通し。各事業の透明性を高め、経営責任を明確にして多角化を加速する狙いがあるという。Googleとしては、これまで検索と広告で築き上げてきた自らの殻を破る「第2の創業」に挑む姿勢を鮮明に打ち出した格好だ。
Googleの今回の組織再編をめぐる詳細な内容については関連記事を参照いただくとして、筆者が注目したいのは、Googleが手掛けている企業向けクラウドサービスの行方である。
今回の発表内容を見る限り、現在のGoogleはそのまま持ち株会社の傘下に入るようだが、年内に組織再編を具体的に進めていく中で、さらにGoogle内の事業を分社化する可能性があることも示唆されているようだ。
グーグルの動きがIT業界の大再編に発展する可能性も
そこで筆者の頭に思い浮かんだのは、企業向けクラウドサービスで先行する米Amazon.comの事業子会社であるAmazon Web Services(AWS)に対抗して、Googleが「Google web Services(GWS)」を設立するのではないかということだ。もちろん、「GWS」という名は筆者の勝手な想像だが、Googleはすでに企業向けクラウドサービスとしてIaaS、PaaS、SaaSとも提供しており、やろうと思えばすぐにでも「GWS」を始められるはずだ。
果たしてGoogleが企業向けクラウドサービスを分社化する可能性はあるのか。筆者はあり得ると見る。その理由は、分社化したほうがクラウドサービス事業としてもっと機動的に展開できるし、この事業を推進するうえで不可欠なパートナーやユーザーとのエコシステムづくりにも迅速に立ち回れて有利に働くと考えるからだ。
ただ、AWSはAmazon.comが開示している決算内容によると、すでに「儲かる会社」としてさらに勢いづいているが、Googleの企業向けクラウドサービスが事業として成り立っているかどうかは、Googleが個別の業績を開示していないので分からない。とはいえ、Googleがこの事業を一本立ちさせて大きくしていこうという気が本当にあるならば、「GWS」が設立される日はそう遠くないはずだ。
もう1つ気になるのは、Googleは企業向けクラウドサービス市場においてAWSやMicrosoftに次ぐ存在感があるものの、Google自体に企業向け事業の経験とノウハウの蓄積が乏しいように見受けられることだ。その意味では、「GWS」を大きく飛躍させるために、実績のあるエンタープライズITベンダーを買収して「GWS」と統合するといったダイナミックな戦略に打って出ることも、Googleは視野に入れているのではないだろうか。
そう考えると、Googleが企業向けクラウドサービスを分社化する日は、IT業界の大再編が始まる時なのかもしれない。