人とは愚かな動物である。インターネットは本当はガラスのように壊れやすいのに、そのありがたみを忘れてしまう。2014年に発覚したOpenSSLの脆弱性「Heartbleed」で気付かされたように、インターネットの重要なプログラムがサポート不足に陥っていることも多い。
私たちは、Heartbleed脆弱性の騒動を通して、ネットの重要なプログラムをメンテナンスすることの重要性を学んだ。こうした問題を防ぐために、立ち上がったのがLinux FoundationのCore Infrastructure Initiative(CII)だ。ネットが破たんしないよう、往々にして忘れられがちなプログラムが正常に稼働するよう資金提供するのが、CIIの使命だ。
そのCIIが、設立当初から援助しようとしているプロジェクトの1つがNetwork Time Protocol(NTP)である。
NTPはサーバやPCの時刻同期にも使われる、インターネットで必須の機能だ。NTPがなければ、バックアップや金融トランザクション、多くの基本的なネットワークサービスが正常に処理されない恐れがある。最上位のNTPサーバは原子時計などの時刻源(stratum 0)に接続し、他のシステムにNTPというプロトコルで同期する。
NTPそのものはフリーのプロジェクトで、管理者は最近までHarlan Stenn氏1人だった。同氏はわずかな予算を使いながら自宅で作業してきたが、2014年にはそれも限界に達し、NTPを捨てようと考え始めていた。そのとき、手を差し伸べたのがCIIだった。
同氏は2015年4月30日までの1年間を対象に8万4000ドルの支援をCIIから取り付けていたが、それ以降は再び、NTPのメンテナンスを継続するかどうかの決断を迫られ、Linux Foundationとぎりぎりまで交渉を続けていた。
こうして、Linux FoundationのエグゼクティブディレクターJim Zemlin氏がLinuxConで発表した通り、Stenn氏はもう1年間分の資金支援を受けられるようになった。またCIIは、NTPのコードの現代化に取り組むPoul-Henning Kamp氏と、新しいNTPセキュリティプログラム「NTPSec」を創設するAmar Takhar氏にも、追加で資金を拠出するという。
こうしてNTPは再び難を逃れたが、インターネットの基礎を成すプロトコルについて考え直すべきことは多い。企業や組織、政府は、小さなオープンソースプロジェクトがきちんと資金を賄えているのか、気を配るべきだ。CIIは手始めとしては素晴らしいが、解決すべき課題は山積している。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。