筆者は数年前、「Intel Developer Forum」(IDF)に参加するためにサンフランシスコに滞在していた際、自分と同じテクノロジ関連のジャーナリストと話す機会があった。そのジャーナリストは、IDFには行かないと語った。
「チップにはあまり興味がない」とのことだった。
そのとき、IDFの本質はPCを高速化するIntelの最新チップ群を紹介することだけではないと心の中で思ったことを覚えている。実際のところIDFは業界の中でも、有用な情報が潜む穴場の1つだと思う。なぜならIntelは、他社がモノのインターネット(Internet of Things:IoT)からデータセンターまで、さまざまな自社製品を動かすために使用する基盤部品の多くを製造しているからだ。そのため、IDFに参加すると、業界の今後の方向性や変化を理解できることがよくある。
それが今も当てはまるなら、業界もIntel自体も興味深い曲がり角に差し掛かろうとしている。
筆者がIDFに参加し始めてからの10年間で、IDF 2015(米国時間8月18日~20日にサンフランシスコのMoscone Westで開催)ほど、Intelが野心的な目標を掲げたのを見たことはない。最高経営責任者(CEO)のBrian Krzanich氏が強調していたものを振り返ってみよう。
会場の様子
提供:Jason Hiner/TechRepublic
「RealSense」--IntelのRealSenseは3Dカメラを使うことで、例えば、デバイスで3D空間を理解したり、距離を測定したり、3Dスキャンを実行したり、3Dジェスチャーに反応したりする機能を実現させることができる。コンピュータやタブレット、スマートフォン向けのMicrosoftの「Kinect」のようなものだが、RealSenseの方が多くの機能を備える。RealSenseはSaviokeの「Relay」のようなロボットに視力を与えることもできる。さらに、IntelはLinuxから「Windows」「Android」「OSVR」まで、10種類を超えるプラットフォームにRealSenseを提供する。
「3D XPoint」--ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)を劇的に向上させることを目指すこの新アーキテクチャは、Intelの本領分野だ。Krzanich氏は、3D XPointをメモリおよびストレージ分野におけるこの25年間で最大の進歩と呼び、同アーキテクチャは医療研究やクラウドコンピューティング、没入体験(VR)の飛躍的な進歩に寄与するだろう、と述べた。これはIntelの伝統的な領域だが、野心的であることに変わりはない。
「Identity IQ」--「ウェアラブルはパスワード問題を解決するのに役立つかもしれない」とKrzanich氏は述べている。Intelはブレスレットとカメラ、パスワードの組み合わせを用いてユーザーの認証を行うIdentity IQというセキュリティブレスレットを披露した。コンピュータに近づくと、コンピュータがカメラでブレスレットとユーザーの顔を認識し、ユーザーはパスワードを入力する。その後、ユーザーがコンピュータから離れると、Identity IQはコンピュータを自動的にロックし、ユーザーが戻ると、自動的にロックが解除される。他人がユーザーのブレスレットを持ってコンピュータに近づこうとしても、Identity IQは(顔認識によって)別人であることを認識し、パスワードの入力を求める。
「Curie」IoTチップ--Krzanich氏は科学者のMarie Curie氏にちなんで名付けられたIntelのIoTチップを披露した。サイズは指の爪ほどで、エンドツーエンドのソフトウェアプラットフォームが含まれる。もちろん、Curieの狙いは、IoT分野の競争でARMチップに対抗することだ。
「Enhanced Privacy Identification」(EPID)--EPIDはIntelのIoT向けセキュリティプラットフォームである。最近になって、攻撃者がリモートから車体にアクセスして制御することができてしまう「Jeep Cherokee」の脆弱性など、IoTのセキュリティに関する悪夢のような話を耳にすることが増えてきた。Krzanich氏によると、IoTのユーザーが同社に話す一番の問題は常にセキュリティに対する懸念だという。EPIDは、人々とデバイスのIDを認証および確認するデジタル署名を強化することで、IoTセキュリティの向上を目指す同社のアプローチだ。