Intelは、自分が試着している服の色をジェスチャーだけで変えることができる鏡や、ユーザーを認識し、本体に触ることなく(そして病原菌を広げることもなく)操作できるスマート自動販売機、スマートフォンへの接続機能を備え、親になったばかりの人々が赤ん坊のことを忘れてしまう(インターネット時代では、こういう危険なことがよく起きるようだ)のを防ぐ、チャイルドシートに装着可能なスマートクリップも披露した。テレビプロデューサーであるMark Burnett氏との提携により、Intelは、ギークやイノベーターをテレビスターへと変えるであろう「America's Greatest Makers」というリアリティ番組も発表した。
しかし、IntelがIDF 2015で強調していたことの中で最も野心的で、最も興味深かったのはロボットだ。
「ロボット業界は変革の時を迎えようとしている」(Krzanich氏)
Intelはモバイル革命を予期していたにもかかわらず、その波に乗り損ねた。現在、地球上のスマートフォンのほぼすべてとタブレットの大半には、ARMベースのチップが搭載されている。モバイル分野で足がかりを得ようと何年も奮闘してきたIntelは今、モバイルの次を見据えているように思える。同社はIoTとロボットの未来に賭けている。
IntelがIoTで成功を収めるのは難しいだろう。なぜなら、Intelがモバイルで敗北する原因になったのと同じこと、つまり同社のチップがあまりにも高価で、あまりにも多くの電力を消費することが、IoTの世界ではこれまでよりもはるかに大きい問題になるからだ。IoTの世界では、デバイスがさらに小型化し、さらに電力消費に敏感になり、さらに価格意識が高まる傾向がある。
しかしロボットについては、Intelにもかすかな望みがあるかもしれない。ロボットが求めるのは純粋なコンピューティング能力であり、それこそがIntelの得意とするところだ。さらに、ロボットはIoTデバイスより大型かつ高価で、今でも多くの電力を必要とするため、Intelのチップに対するARMの利点の数々はここではどれも効力を持たない。
Intelがロボット分野で進めていることは、ほかにもある。同社はRealSenseカメラなどのセンサに投資しており、それは既に現実世界のさまざまな製品に採用され始めている。例えば、Lenovoの「ThinkPad Yoga 15」や、ホテルで配達アシスタントとして使われているSaviokeのRelayロボットなどだ。
「当社の(技術が搭載された)デバイスが、もっと人間のように行動するようにしたい」(Krzanich氏)
IDF 2015で披露されたデモでのRealSenseの挙動は、期待を抱かせるものだった。例えば、RealSenseは人間を3Dスキャンし、それを基に実物そっくりのアバターを作成した。また、LenovoのYogaのようなノートPCから、RealSenseは人々の動作を検知し、それをMicrosoftのKinectよりはるかに正確にゲーム上での動きに変換した。RealSenseはSaviokeのRelayが実際に使い物になるロボットとなるのにも一役買っている。同ロボットはカリフォルニア州北部の複数のホテルで既に使われている。
したがって、Intelが、以前ほど多くの新しいサーバやPCが必要ない世界、そして同社がモバイル革命に乗り損なった世界で、貴重な時間とリソースをどこに投資するのか知りたければ、その答えはロボットであると考えておそらく間違いないだろう。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。