EMCは仮想化大手のVMware、ビッグデータを手がけるPivotalと企業の連合構造を築いている。報道によると、EMCは元に戻すことを視野に入れているという。合併(たとえば、EMCが株式の過半数を所有するVMwareを買収する、またはその逆)の話は理にかなっているが、最大のリスクは、企業の統合に要する時間である。
エンタープライズ業界の動きは非常に速いため、さまざまに生じるものをじっくりと統合していく時間的余裕がEMCにはないかもしれない。
Re/codeの先頃の報道によると、EMCの取締役会は複数の選択肢を検討しており、その1つはVMwareにEMCを買収させることだという。もう1つの選択肢は、EMCがVMwareを買収することだ。いずれの場合でも、買収を行う十分な論理的根拠がある。次のことを考えてみてほしい。
- 企業連合(VMware、EMC、Pivotal、VCE)を、統合された掘り出し物としてエンタープライズ市場に売り込むのは難しい。一方、最終的な目標はIaaSである。VMwareは主にソフトウェア、EMCは主にハードウェアをそれぞれ旧来の方法で販売している。
- EMCは自社のモデルをクラウドに移行させる必要がある。EMCはVirtustreamを買収し、インフラストラクチャクラウドを構築する手段を獲得した。しかし、その買収(書面上では、IBMによるSoftLayer買収と同じ構造だ)の効果が現れるまでには時間がかかるだろう。一方、VMwareはクラウドを実現するが、「as-a-Service」分野では存在感を発揮できていない。力を合わせることで、EMCとVMwareは中心をなす機能に関してコストを節約し、より効果的なGo-To-Market戦略を作り出して、事業を移行させる体制が整う。
- かなりのコスト節約が可能だ。Wells FargoのアナリストであるMaynard Um氏の試算によると、EMCとVMwareが合併すると年間コストを8億5000万ドル節約できる可能性があるという。
EMC連合は以下のようなクラウド戦略を用意している。
問題は、エンタープライズ市場が急速にクラウドに移行しているということだ。そのペースは非常に速いため、おそらくEMCとVMwareが統合企業として軌道に乗るまで待ってはくれないだろう。統合に気をとられている両社に対して、競合他社はFUD(恐怖、不安、疑念)戦術によって襲いかかってくるはずだ。
さらに、VMwareの独立性にも疑問が呈されるかもしれない。これは重大な問題だ。VMwareとEMCのパートナーの多く(いくつか例を挙げると、CiscoやNetApp、Red Hatなど)はライバルでもある。合併したVMware、EMCとのコーペティション(競争関係にある企業同士の協力)は激化するだろう。EMCとVMwareの営業担当者の間で競争意識が芽生える可能性もある。合併後の企業で従業員の離反が発生したら、厄介な事態になるかもしれない。
一方、EMCはVMwareと合併しても、自社の事業を手放すことを余儀なくされるだろう。DocumentumやRSA、Pivotalはすべてスピンオフされて、売却される可能性もある。