EMCジャパンが先頃、企業向けハイブリッドクラウドソリューションを発表した。さまざまなクラウド関連技術・製品を手掛けているEMCだが、クラウドサービスそのものをやる気はないようだ。なぜか。
“ITaaS”を実装できるソリューションを提供
EMCジャパンが先頃発表したのは、米EMCとグループ企業である米VMwareのハードウェア、ソフトウェア、サービスを統合し、パブリッククラウドとプライベートクラウドの両方のメリットを活用できる「EMC Enterprise Hybrid Cloud(EHC)」と呼ぶソリューションである。
EHCを活用すれば、ベストプラクティスやリファレンスアーキテクチャを適用することで、わずか4週間で“IT as a Service(ITaaS)”を実装でき、パブリッククラウドサービスの俊敏性、およびプライベートクラウドインフラの管理のしやすさとセキュリティ面における安全性を両立することが可能になるとしている。
発表会見で説明があったEHCの詳しい内容については関連記事を参照いただくとして、ここでは筆者が以前からEMCに対して抱いている疑問について取り上げたい。
それは、EMC自体がワールドワイドでデータセンターを設け、クラウドサービスに乗り出すことはないのか、ということだ。資金力も技術力も展開力もあるEMCならば、グローバルなクラウドサービスプロバイダーの有力な1社になり得るのではないか。
この疑問を、発表会見の質疑応答で、EMCジャパン執行役員システムズエンジニアリング本部長の飯塚力哉氏に聞いてみた。すると同氏は次のように答えた。
EMCジャパン 執行役員 システムズエンジニアリング本部長 飯塚力哉氏
「EMCはオープンで幅広いクラウド関連ソリューションを提供し、ユーザー企業や協業パートナーであるクラウドサービスプロバイダーが展開しているクラウドサービスを支援する役回りに徹している。従って、EMC自体がクラウドサービスを手掛けることは考えていない」
“餅は餅屋に徹する”
実は、筆者は今年6月、米EMCシニアバイスプレジデントでアジア太平洋日本地域プレジデントのDavid Webster氏が来日した際に取材の機会を得て同じ質問をしたことがある。その時の同氏の答えは次のようなものだった。
「EMCのクラウド事業は、当社が開発した技術や製品を、協業パートナーであるクラウドサービスプロバイダーを通じて提供するのが基本的な戦略だ。EMC自身がクラウドサービスプロバイダーになることはない。あくまでもクラウドサービスに適用する技術や製品の提供に徹するのが当社のスタンスだ」
さらに同氏は、「ユーザー企業がクラウドを利用する上で、技術や製品における柔軟性と選択肢を提供するのが当社のクラウド事業戦略だ。そのためのビジネスモデルとして、当社は協業パートナーとのエコシステムをベースとした水平協業展開を推進している」と語った。
それから半年が経ち、今回ハイブリッドクラウドソリューションを提供し始めたこともあって、改めて飯塚氏に問いかけてみたが、どうやら水平協業で“餅は餅屋に徹する”事業戦略に変わりはないようだ。ただ、その代わりにVMwareがクラウドサービスに乗り出しており、親会社であるEMCはその後ろ盾になる格好だ。その意味では、EMCグループとしてクラウドサービスをどう展開していくのか、という視点でとらえておく必要がありそうだ。