中国ビジネス四方山話

中国のクラウドソーシング「威客」とは

山谷剛史 2015年10月13日 07時00分

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 中国で副業をするサラリーマンやOLは少なくない。副業と一言でいっても曖昧ではあるが、旧来のネットの副業でいえば淘宝網でオンラインショップを片手間で運営したり、株や投資信託などの財テクで金を増やしたりする例があった。最近では、不動産はおろか株方面まで誰もが「儲かる状況ではなくなった」と認める状況となり、淘宝網についても競争が極めて激しく、店が信頼を得るまで軌道になかなか乗らない茨の道でもあり、中国ネットユーザーの多くが想像する副業はもはや儲からなくなった。

 2015年によく言われるようになったO2O(Online to Offline)もサービスは無数に登場したが、今は淘汰が行われている(詳しくは「中国ネット界のホットトピック「O2O」に終焉の噂--その真相は」を参照されたい)。サイトは淘汰されているけれど、自宅で働きつつ、仕事の幅を増やしたい人が、北京・上海から内陸の都市などでサイトを利用しながら副業を行っている。O2Oサイトを介して起業した人々は、教育から家事に至るまで異なるサービスを立ち上げているが、「外売(waimai)」と呼ばれる食事のデリバリーサイトを利用して、食を販売するというのが最もメジャーなようだ。

 クリエイティブな人が使っているのは、威客(Witkey)と呼ばれるジャンルのクラウドソーシングサイト。著名どころでは「猪八戒」「一品威客」「任務中国」などがある。Witkeyは「智慧(wit)」と「鍵(key)」をつなげた造語で、どうも中国だけで、クラウドソーシングの同義語としてWitkeyという言葉が使われているようだ。サービスを販売する威客系サイトのデザインは、モノの販売で有名になった淘宝網や天猫とよく似ていて、各サイトのメニューを見ると、「ウェブデザイン」「ロゴデザイン」「アプリ開発」「イラスト」「工業設計」「ソフトウェアデザイン・開発」「ゲーム開発」「ユーザーインターフェース設計」「著作権・商標登録」「会計」などがある。

 威客の歴史は2007年頃にさかのぼるとも言われ、案外古い。しかしながらニーズがなく、認知度も高まらないことから「超低空飛行のジャンル」と言われていた。O2Oの認知の高まりから、ようやくクラウドソーシングが認知されるようになった。具体的な数字を出すと、中国威客市場で8割のシェアと自称する「猪八戒」は、会員数が1200万、1日の取引量平均が5000~1万、取引総額平均が約800万元(1億5000万円強)、1日平均のページビューが4500万だという。猪八戒が2015年6月に26億元の融資(500億円弱)を調達すると、同サイトと中国のクラウドソーシングの将来が有望視されるようになった。翌7月には、淘宝網の普及とともに集落全体がオンラインショップになった淘宝村ができたが、同様に猪八戒の本拠地である重慶では威客村、つまりクリエイターたちが集まる集落ができたと報道された。

 では今後クラウドソーシングが伸びてくるかというと、筆者はO2Oと同様に怪しいと考える。中国の流行がネットにほぼ依存するようになった今、ネットの口コミというのは極めて重要となっている。例えば、中国人観光客の日本での爆買いは特定のブランドの特定の製品に集中するが、これはネットの口コミによるものである。日本での仕掛人がある製品を大量に仕入れ、中国の微博(Weibo)や微信(WeChat)などに情報を拡散してニーズを高めると、中国系の各ショップからオーダーが入り、儲かるわけだ。さまざまな流行も、SNSでの仕掛けがあって、口コミが大きな渦となる。しかしO2Oやクラウドソーシングは、影響力のあるメディアや個人が依頼を受けて広告をする以外は、爆買い商品のようにステルスマーケティングを行ってまで大きく金が動く要素がなく、口コミが発生しにくい。

 また中国の商取引では信頼が重要な指標である。信頼とはオンラインショップ同様、過去の利用者の「利用してよかった」という口コミの積み重ねである。しかし低空飛行だったために利用者が少なく、どの利用者にしろ信頼があるかどうか測れるほどの実績がないため、相手を信頼しきれないという問題もある。

 O2O同様、新しいライフスタイルとして、アンテナを立てて新しいサービスを発掘している人には受け入れられるだろうが、それ以上の発展は難しい。(13億の人口の中では)1000万人台という小さなコミュニティの中で、しばらくはお金が回っていくだろう。

山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター
2002年より中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、アセアンのITや消費トレンドをIT系メディア・経済系メディア・トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に「日本人が知らない中国ネットトレンド2014 」「新しい中国人 ネットで団結する若者たち 」など。

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