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現代OSSを「3匹の子ぶた」で再認識--NTTコミュニケーションズのエバンジェリスト

ZDNet Japan Staff

2015-11-20 15:47

 クラウドコンピューティングやDevOpsアプローチが普及する中、オープンソースソフトウェア(OSS)の活用に注目が集まっている。クラウドコンピューティングの基盤を構築する「OpenStack」や、コンテナ管理ツール「Docker」を、自社システムで活用している企業は多い。

 IT専門の調査会社であるIDC Japanは4月、「国内企業におけるオープンソースソフトウェアの利用実態調査結果」を公表した。OSSを「本番環境で導入している」と回答した企業は31.5%、「試験的に導入している」が5.2%、「導入に向けて検証している」が4.1%、「これから導入を検討する」に至っては10.0%に上った。

「3匹の子ぶた」版、「北斗の拳」版などオープンソースの世界をユニークな視点で語るNTTコムの村上氏
「3匹の子ぶた」版、「北斗の拳」版などオープンソースの世界をユニークな視点で語るNTTコムの村上氏

 NTTコミュニケーションズで技術開発部担当部長を務める村上守氏は「企業システムでOSSが活用されているのは、今に始まったことではない。OSSのウェブサーバソフト『Apache』は、20年近く前から多くの企業で使われている」と指摘する。

 「IaaS関連技術、クラウドエバンジェリスト」という肩書きを持つ同氏は、現在でも精力的にコードを書き、オープンソースコミュニティに公開している。同社最初のIaaS(Infrastructure as a Service)型クラウドサービスを全てOSSで構築した際、陣頭指揮を執ったのは村上氏で、その流れは「Enterprise Cloud」などのサービスに引き継がれている。

 「ソースコードはポエム。コードの中でバグを見付けると、開発者の心理状況を想像してしまう」と笑う村上氏。OSSの歴史とともに歩んできたとも言える同氏は、現在のOSSを取り巻く環境をどのように見ているのか。話を聞いた。

OSS採用の理由は「予算と時間の問題」

 OSSエバンジェリストとしての原点は中学時代まで遡る。きっかけは理科の先生が磁石とコイルだけでモーターを作り、「モーターはなぜ回るのか」の原理を目の前で解き明かしてくれたことだ。

 「OSSの魅力は中身が見えること。モーターの原理を理解した時のように、その仕組みを理解すれば次に改変ができる。例えば、ソフトウエアはコードにif文を1つ追加するだけで、UI(User Interface)を見やすくできる。OSの付加価値となる機能は、ゼロから作り出すものではなく、あるベースの上にアイデアを追加していく発想だ。OSSでは開発者全員でアイデアを具現化し、より良いものにしていける」と話す。

 村上氏がNTTに入社したのは1987年。最初に配属されたパケット通信事業本部では、パケット交換機(ハードウエア)の設計や制御ソフトウエアの開発を担当した。その後、その後、NTTPCコミュニケーションズに異動し、法人向けインターネット接続サービスである「InfoSphere」事業の立ち上げに携わる。同事業がNTTグループ最初のインターネット事業であることは、あまり知られていない。

 村上氏は認証課金システムやVoIPサービスなどを、OSSを活用して構築した。その理由は、「2004年当時はインターネット事業に費やす予算がなく、OSSを採用せざるを得なかったから」だという。

 実は「Biz ホスティング ベーシック」をすべてOSSで構築したのも、価格を抑える必要に迫られたためとのこと。村上氏は、「当時の競合は、Amazon Web Services(AWS)やインターネットイニシアティブ(IIJ)で、設計価格は決まっていた。競合他社よりも低コストで提供することは至上命題だが、『NTTブランド』を信頼する顧客を落胆させるサービスは出せない。“全方位制約だらけ”の中で最良の製品を提供するには、どのような技術を使えばいいのかを考えた」と、当時を振り返る。

 導き出した“解”がOSSのハイパーバイザ型仮想化ソフトである「KVM(Kernel-based Virtual Machine)」の採用だった。自身もOSSのユーザーであり、コードを書いている立場上、OSSの価値は理解していた。社内にOSSの良さを訴求したが、当初、社内は全員OSSの採用に難色を示していた。

 「KVMはいわば“素材”。ディストリビューターによるサポートはない。つまり、故障しても誰も保証してくれない中で、第三者に利用してもらうサービスを作り上げなければならなかった。実際、KVMでシステムを構築するよりも、自分たちで故障対応しなければならないことの方が大変だった」(村上氏)

開発、運用アウトソースならOSSは不要

 ビジネスで生み出されるデータ量が急増する中、大規模データの蓄積・分析を分散処理するフレームワーク「Hadoop」や、データ収集基盤「Fluentd」の導入を検討する企業が増えている。こうしたトレンドに対し村上氏は自らの経験を基に、「運用をアウトソースするのであればOSSの価値を引き出しきれない」と指摘する。

 OSSは保守/メンテナンスが難しいと言われる。その理由は、バージョンアップスピードの速さだ。例えばAndroidは、基本的に1年に1回バージョンアップする。OpenStackに至っては、6カ月ごとにメジャーバーションアップを繰り返す。このスピードに自社で追従できないのであれば、OSSには手を出さないほうがいいというのが、村上氏のアドバイスだ。「OSSにはコストメリットがある」と主張する向きもあるが、「ディストリビューターに手取り足取り面倒を見てもらえば、プロプライエタリソフトと(運用コストは)変わらない」(村上氏)という。

 「OpenStackが注目されているのは、ソフトウエアよりも、そのエコシステムが魅力的だからだろう。ベンダーは(OpenStack向け)プラグインを提供し、自社製品をプロモーションしている。IaaS上で必要とされるソフトウエアすべてを提供できるベンダーは少数だ。各ベンダーが補完し合いながら市場を拡大している」(村上氏)

 特徴的なのは、こうした市場拡大の一翼を担っているのが、IT専門ではない企業であることだ。既に欧米では自社の製品をアプリケーションを使って提供する動きが活発化している。自社製品が提供する付加価値をサービス化し、アプリケーションを通じてオープンにすることで、新たなビジネスモデルを構築する企業が増加している。当然、企業内でも組織変革が実施しており、今まで“企業システムのお守り”をしていたシステム開発者たちには、新たなソフト/アプリ開発が求められている。

 村上氏は、「これからのシステム開発者は(1つの作業しかできない)『単純工』ではなく(複数の作業をこなせる)『多能工』になる必要がある」と語る。

 例えば、「サーバエンジニア」であっても、サーバOSのインストールだけしかできない、あるいはサーバラックの組み立てしか作業したことがないという人材は少なくない。

 しかし、自分たちがお客様にクラウド環境でサービスを提供するようになれば、ストレージやネットワーク、保守などを鳥瞰図のように把握し、それぞれの関係性を理解した上で管理する必要がある。そのために必要なのは、システム開発者が自ら提供しているサービスのユーザーとなり、「お客様目線」でソフトウエアを評価することだ。そして、手を動かしてソフト(コード)を書き、できるだけ第三者からのフィードバックを受け、さらに改良を重ねる姿勢だと村上氏は説く。

「3匹の子ぶた」から学ぶ、現代の教訓

 「ソフトウエア開発にはパラダイムシフトが起こっている。しかし、日本企業のシステム開発者は、それに気付いていない、というよりは、気付こうとしていない」と村上氏は指摘する。

 では、どのようなパラダイムシフトが起こっているのか。例えに出して説明するのが「3匹の子ぶた」の物語――子ぶた3兄弟がそれぞれ、わら、木材、レンガで家を建てた。しかし、わらや木材の家はオオカミに壊されてしまい、レンガの家建てた兄弟の家に逃げ込む。そして3匹とも命が助かる――だ。

 教訓は「苦労して(時間をかけ)良いモノを作れば、安心して生活ができる。だから最初は苦労しても良いモノを作ろう」というのが一般的だ。しかし、村上氏は「この教訓は、ソフトウエア開発には通用しない」という。

 「わらの家を建てた豚は、とりあえず最初に“マーケットイン”した。この時点でライバルよりも一歩先にいる。そして、(手荒い)フィードバックを得たことで、自分の制作物の弱点を理解した。さらに、自分の制作物よりもよいレファレンスを見て学び、最終的には生き延びている。これからのソフトウエアは“とりあえず出してマーケットの声を聞き、ダメだったら次の一手を打つ”というアプローチ。そうでなければ生き残れない」(村上氏)

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