金融機関を狙う悪名高い「Dyre」マルウェアがアップデートされ、「Windows 10」を標的に加えるとともに、同OSの「Microsoft Edge」ブラウザにも対応するようになっている。
「Dyreza」という名称でも知られるDyreは、2014年7月にサイバー犯罪の世界に登場した後、認証情報の窃取を目的とする卑劣なマルウェアとして、またたく間にその名を世間に知らしめた。
Dyreの標的は、Salesforce.comのユーザーや銀行の顧客であることが明らかになっていたが、最近になってフルフィルメント(受注から出荷、決済までのすべての業務)や倉庫業務、在庫管理といったソフトウェアのベンダーや、コンピュータの卸売り業者など、多岐にわたるサプライチェーン企業から認証情報を窃取するように改修されていることが明らかになっている。
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セキュリティ企業Heimdal Securityは米国時間11月18日、サイバー犯罪請負いサービスの一環として販売されているこのマルウェアが、Windows 10と、同OSに搭載されているEdgeブラウザも標的にするよう更新されていると発表した。
同社の推定によると、およそ8万台のWindowsマシンがDyreに感染しているという。Dyreは一般的にスパムキャンペーンを通じて広がっており、しばしば「Upatre」という悪意を持つダウンローダ経由でインストールされる。Upatreについては、Cisco Systemsが4月にブログで解説している。
現在のところ、Windows 10が標的として追加されたといっても、Windows 10マシンは10月初めの時点で1億1000万台程度であるという点を考えると、「Windows」のユーザーベースのうちのほんの一握りが増えたにすぎない。
Windowsの最新バージョンであるWindows 10は、NetMarketShareによると世界のデスクトップOS利用シェアの約8%を占めている状態だという。とは言うものの、Dyreは既に「Windows 7」と「Windows 8.1」「Windows XP」「Windows Vista」を対象としている。
Dyreはブラウザのプロセスに「取り付き」、その特権を利用し、特定ドメインへの接続を監視することで、被害者が入力した認証情報を収集する。この種の攻撃はMan in the Browser(MITB)攻撃と呼ばれている。
MicrosoftもDyre(同社は「Dyzap」と呼んでいる)に関する情報を更新し、同マルウェアがGoogleの「Google Chrome」や、「Internet Explorer」(IE)、Mozillaの「Firefox」といったブラウザだけでなく、Edgeブラウザも監視するというHeimdalの発表について確認している。
Microsoftは17日付けのブログで、Edgeに対する特定の攻撃を阻止することを目的とした取り組みについて解説しているが、現状の対策はマルウェアへの特効薬にはならないとコメントしている。
また同社は、Dyreが監視しているウェブサイトのドメインとしておよそ150のドメイン名を挙げている。そのほとんどは米国および欧州の銀行のサイトだが、ビットコインのサイトも含まれている。
Microsoftによると、Windowsマシン上に%APPDATA%\local\[ランダムな英数字群].exeといったファイルが存在している場合、そのマシンはマルウェアに感染している可能性があるという。
また、感染の兆候としては、ユーザーに対して「explorer.exeやsvchost.exeといったプログラムにより高い権限を与えるよう、ファイアウォールが突然求めてくる」というものもある。
提供:ZDNet
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。