さらに同氏は、医療事業者は、それらのデータを収集して、電子カルテや病院のレポートなどの他のデータと組み合わせ、「Watson Health Cloud」のようなアナリティクスシステムに入力することで、医者や患者自身が、健康を管理するための情報を得られるようにする必要が出てくるだろう、と付け加えた。
しかし、外因性データを生成するデバイスやプラットフォームはあまりにも多岐にわたっており、そのサイロ化した情報を入手し、医療事業者が利用したいシステムに入力することは非常に難しい。
Watson Healthグループは、立ち上げからの6カ月強で、医療分野の多くの企業とパートナーシップを結んだ。この中には、医療機器メーカーのMedtronicやJohnson & Johnsonが含まれ、最近ではAppleとも協力関係を結んでいる。そしてIBMは、Appleとのパートナーシップが、この情報サイロの問題を解決するのに役立ってくれるかもしれないと期待している。
「IBMは1年半前からAppleと強力なパートナーシップを結び、Appleのデバイスやアプリをエンタープライズ環境で利用できるようにする取り組みを進めているが、Watson Healthとのパートナーシップは、HealthKitやResearchKitのような方向に向かっている。これらの種類のデータセットのインターフェースをどうするか、データをどうWatson Health Cloudに持ち込むか、患者のためにこの種の情報を必要としている医療機関にサービスをどう提供するかなどに取り組んでいる」(Ebadollahi氏)
買収とターゲットとなる市場
立ち上げからの6カ月間で、Watson Healthは激しく動いた。新しい本拠地を設け、新たな部門責任者を据え、医療業界向けの多くの新規クラウドサービスをリリースした。IBMのEbadollahi氏によれば、Watson Healthの人員数は「少なくとも2桁」という勢いで増えている。「その成長は非常に速い」(Ebadollahi氏)
さらに同部門は、10億ドルで買収した医療画像を扱う企業Mergeを含め、いくつもの企業を買収した。Mergeの買収によって、Watson Healthのアナリティクスシステムは、テキストで記述された資料だけでなく、レントゲン写真やその他の医療画像にも利用できるようになる。
またWatson Healthは、医療ビッグデータアナリティクス企業のExplorysと、健康管理ソフトウェア企業Phytelを買収している。Explorysは医療事業者のシステムに接続してデータをクラウドに移し、大勢の人たちのリスク層別化やケアサービスの管理などに関するアナリティクスを行う事業を持ち、Phytelのソフトウェアは、医者が個人の治療を管理できるようにする。
「Explorysは集団の健康状態を管理しようとする際に、マクロ的な視点を提供する・・・Explorysが集団のマクロ的な視点を扱うものだとすれば、Phytelが提供するのはミクロ的な視点だ。このプラットフォームは、ある人に糖尿病や心不全のリスクがあることが分かっているとき、事業者がケアや福祉サービスを提供できるようにする」(Ebadollahi氏)