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山谷剛史の「中国ビジネス四方山話」

中国の監視カメラネットワーク「天網」--逃亡者を「見逃す」ことも?

山谷剛史

2016-01-12 07:10

 天網という固有名詞がある。意味は2つある。1つは、海外に資産を持ち逃げする汚職役人を、海外と連携してでも捕まえるという中国政府のアクションを指す。もう1つは、今回紹介する監視カメラとスマートな解析システムを使った治安強化である。中国において監視カメラは、日本とは比較にならないくらい多く街中に設置されている。

 中国は、2020年までに「公共の場所を中心に全域をカバーし、全土で情報をシェアしながらいつでも利用できる、どこからでもコントロール可能な」カメラシステムを設置することを目標としている。単に監視カメラを設置すればいいわけではない。そのカメラは高解像度で、ネットワークに繋がっていなくてはならない。今後、中国国家級・省級の監視カメラ映像データ分析センターが各地に建設されていく。

 顔認識や車のナンバー認識、事件発生のスマートな通知のほか、中国版GPSこと「北斗」にもここから得られたビッグデータが活用されるとしている。中国のネットワークの中で得たデータを様々な用途に活用できそうだが、今のところ、ビッグデータを活用する中国3大ネット企業「BAT」こと、百度(Baidu)、阿里巴巴(Alibaba)、騰訊(Tencent)のクラウド連携は報じられていない。しかし、中国のやや閉じたインターネット環境の中で、各社がネットとリアルで連携し、個人を管理する日が来ても不思議ではない。

 国に先んじて、内陸湖南省の省都長沙では天網のようなシステムが普及している。2011年から長沙版天網プロジェクトがスタート、5億2800万元をかけて、市内の広場・道路・バス内などに、5万の高解像度カメラが設置された。そのノウハウを学ぶべく、北京や天津や新疆ウイグル自治区などから、関係者が視察にやってきているという。

 長沙では、街中に監視カメラが張り巡らされることにより、事件の犯人検挙率が高まるだけでなく、そもそもの犯罪発生率が低くなり、犯罪抑制につながっている。またそれだけでなく落し物の発見などの目的で、画像を提供して欲しいというニーズにも応えるなど、市民にとって嬉しい使い方も報告されている。こうしたことから、マンションの住民が、「マンションに設置された監視カメラを、天網に組み込んでほしい」と提供を申し出るケースさえもあるという。一個人や一企業が設置した監視カメラは、無線LANルータ同様、初期設定のままで運用されているものが多くハッキングされがちだが、今のところ天網がハッキングされたというニュースはきかない。

 天網で犯罪が暴かれるはずだが、抜け穴もある。先日、湖南省公安局の国内安全保衛という治安を担当する、天網関連の部署の陳検羅隊長と広東省の役人の区少坤氏にまつわる、長沙を舞台にした売春絡みの不祥事が発覚した。区少坤氏は見つかり、メディアの取材が殺到したが、陳検羅氏は雲隠れした。なぜか陳検羅隊長絡みの長沙の監視カメラでもデータが見つからず、天網をくぐり抜けて今も闇の中だ。これは天網を熟知する人だからこそなせる業で、ネットユーザーも不満顔だ。

 天網とは、最初に書いたように、監視カメラによる監視の他に、汚職役人の浄化という意味があるが、正しく働いていないようである。

山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター
2002年より中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、アセアンのITや消費トレンドをIT系メディア・経済系メディア・トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に「日本人が知らない中国ネットトレンド2014 」「新しい中国人 ネットで団結する若者たち 」など。

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