「Windows XP」を使い続けるのは高くつくことが多いが、独ミュンヘン市の事例では、廃止する方がさらにコストがかかる場合もあることが明らかになった。
ミュンヘン市議会ではWindowx XPと「Windows 2000」を完全に廃止しようとしているが、これには、これらのOSを使用し続けている職員1人あたり、1万2000ドル以上の経費がかかるという。
同市議会では、41種類のアプリケーションでまだWindows XPやWindows 2000を必要としており、1万6000人を超えるスタッフのうち、1500人弱がこれらのOSを使用している。
しかし、これらのOSはすでにセキュリティアップデートの提供が終了しているため、安全を確保するには特別な手段を採らざるを得ず、同市がこれらを使い続けることには困難が伴う。
Windows XPとWindows 2000を廃止するには、これらの41種類のアプリケーションを、サポート対象の新しいOSに移行するか、新しいソフトウェアで置き換えるか、使用を中止する必要がある。そのための4年がかりのプロジェクトには、1660万ユーロ(1803万ドル)もの経費がかかるという。
この事例を見れば、何百万ドルものコストをかけて古いOSを使い続けている組織が存在する理由も理解できる。例えば米国海軍は最近、Windows XPを実行しているコンピュータの安全を確保する事業の契約をMicrosoftと結んだ。支払額は少なくとも900万ドルに上るという。
ミュンヘン市がWindows XPとWindows 2000を使い続けてきたのは、これらの41種類のアプリケーションが、大気汚染抑制のための排出ガス監視や、洪水防止など、市にとって不可欠な業務で使われているためだ。
OSの安全性を確保するため、同市はこれらのOSを仮想マシンやスタンドアロンのコンピュータで実行すると同時に、「制限付きデータ交換」と呼ばれる手法や、隔離システム、およびその他の保護手段を使用している。
市議会はこれらのサポート対象外の古いWindowsを廃止することを決めたが、レポートによれば、これはセキュリティリスクの問題だけでなく、これらのOSでは同市議会が利用したいと考えているネットワークの機能やデータセキュリティの機能が限定的にしかサポートされていないことも理由になっているという。
なぜXPはなくならないのか
調査会社GartnerのリサーチバイスプレジデントSteve Kleynhans氏は、組織内の一部のマシンで古いOSを使用していることは、それほど珍しいことではないと述べている。
「多くの場合、更新するうまい手段がない古いアプリケーションがその原因になっている」と同氏は述べている。
「そのような場合、アプリケーションを新しいプラットフォームに移行するだけのコストを払う価値はないが、一部のビジネス向け機能ではそれを必要としている」