国立情報学研究所(NII)と三井住友アセットマネジメント(SMAM)は2月9日、共同で金融資産の有効な運用手法などを研究する「金融スマートデータ研究センター」を設置すると発表した。運営・研究経費を民間が提供してNIIが研究施設を設置するのは、今回が初という。2019年3月まで共同研究に取り組み、研究成果を利用可能な形で一般公開する。
金融スマートデータ研究センターの取り組み
NIIとSMAMは経済領域で「未来予測に向けた社会現象の統計分析やモデル構築」と、「金融商品や企業に関する記事レポートから自然言語処理で情報を抽出する手法の開発」の2つに取り組む。これにより、金融資産の有効な運用方法などを研究する。
喜連川氏は金融分野はデータそのものがビジネスに直結することもあり、学術分野からはほど遠い領域だったと指摘。不動産情報を提供するネクストが研究向けにNiiへデータを解放するなど、企業と学術が連携するケースが増えており、データドリブンの試みが産業を問わず広がっていることを示唆した。
「米国では、データの活用により、再犯率の高い犯罪者の傾向をつかみつつある。洪水などが起こる地域の傾向などの予測がの精度が高まって来た。金融領域でもデータ分析による行動予測や未来予測に挑戦する」(喜連川氏)
SMAM代表取締役社長兼CEO 横山邦男氏は「Fintech領域に取り組むベンチャー企業は多いが既存の金融企業がチャレンジしていない。われわれは自ら資産運用の高度化に取り組む」とした。今回、20代の若手社員からビッグデータ活用が金融にも必要という提案を受けた結果、Niiとの連携につながったと説明し、研究所設立への経緯を明かした。
NII所長の喜連川優氏(右) 三井住友アセットマネジメント代表取締役社長兼CEO 横山邦男氏(左)
金融スマートデータ研究センターのセンター長にはNII所長の喜連川優氏が就任する。さらに物理学の手法を用いて経済や社会の動向分析する水野貴之氏や、自然言語処理を専門とする宮尾祐介氏など4人が参加、SMAMは研究員は5人程度の人員を提供することを想定している。
センターは、NIIの研究施設として設置しSMAMが自社データの提供に加え、特任研究者の人件費などセンターの運営や共同研究の実施に必要な研究経費として3年間で1億円強を負担する。