IoT(Internet of Things)の活用に向けて、関連企業が協業する動きが活発化している。用途拡大へと加速しそうだが、ユーザーの視点から費用対効果についても情報開示を期待したい。
IoT関連企業10社がコンソーシアムを結成
日本マイクロソフトと東京エレクトロンデバイズが先ごろ、IoTプロジェクトの共同検証などを実施するコンソーシアム「IoTビジネス共創ラボ」を発足した。日本市場でのIoTの普及とビジネス機会の拡大を目的としたもので、発足メンバーには両社に加え、アクセンチュア、電通国際情報サービス、日本ユニシス、ブレインパッドなど10社が名を連ねた。
共創ラボでは参加企業をさらに拡大し、さまざまな案件を創出するとともに、IoT技術者を育成するなどの活動を推進する計画。加えて、マイクロソフトのクラウドプラットフォーム「Microsoft Azure」をベースにしたIoTソリューションの開発促進や、共同検証結果を発表するセミナーの開催など、ユーザー企業と共創ラボ参加企業とのマッチングの場を提供していくという。
共創ラボの幹事社である東京エレクトロンデバイスの八幡浩司IoTカンパニープレジデントは今回の取り組みについて、「IoTはアイデアが勝負の提案型ビジネスだ。そのアイデアの共創に向けて自由な発想で議論し研究する場にしていきたい」と語った。
具体的な活動内容については関連記事を参照いただくとして、ここでは八幡氏が説明した「国内IoT市場の予測」と「IoTの導入課題」に注目したい。
従来のICTよりも見えにくいIoTの費用対効果
まず、国内IoT市場の予測について八幡氏は図を示しながら、「現在、国内ICT市場の規模は25兆円とみられているが、既存の領域だけではもはや成長は見込めない。そこで今後の成長分野として期待されるのがIoT市場だ。IoT市場は既存の領域も取り込みながら、今後、年率12%増で推移すると予測されている。まさしくIoTがICT市場をけん引するようになる」と説明した。
国内IoT市場の予測(出典:IDC Japanの調査結果を基にIoTビジネス共創ラボが作成)
一方、IoTの導入課題については、「外部アタックや情報漏えいなどのセキュリティが心配」「IoTの目的設定が難しく、費用対効果が見えにくい」「クラウドや組み込みなど各分野の知識やスキルが不足」といった3点が浮き彫りになってきていると指摘。こうした課題に対応していこうというのが、今回の取り組みの発端になっているという。
八幡氏が挙げた3つの課題は、IoT活用をめぐってこれからずっとつきまとうものばかりである。中でも特に取り上げておきたいのは、「費用対効果が見えにくい」という点だ。これについては、ユーザー企業はもちろん、ベンダー側でもどのような用途に活用すれば有効かを模索している段階で、費用対効果を明確に示すのは難しいといった状況のようだ。
ただ、ここにきて有効活用できそうな用途が各分野で紹介され始めており、実際に明確な効果を上げている事例も出てきている。しかし、そうした成功事例もかかった費用が明らかになっているケースは非常に少ない。
八幡氏は「IoTの費用対効果は従来のICTよりも見えにくい」とも指摘した。それはまず効果そのものが見えにくいからだろうが、こうした状況を乗り越えて多くのユーザー企業にIoT活用を促すためにも、例えば今回の共創ラボのようなコンソーシアムの活動の中で、さまざまなケースにおける費用対効果の目安を示していくことはできないものだろうか。
「IoTはいろいろなことに役立ちそうだけど、費用が結構かかりそう…」といったユーザー企業の声に、ICT業界としてぜひ何らかの形で応えてもらいたいところである。