コマースソフトウェアを提供するSAP Hybrisは2月15日から4日間、本拠地ドイツ・ミュンヘンで年次イベント「SAP Hybris Summit 2016」を開催した。2013年にSAPが買収、2016年初めに「SAP Hybris」というブランドで再出発を切った。
16日の基調講演には共同創業者のCarsten Thoma氏が登場し、クラウドを中心にSAP Hybrisの方向性を示した。
クラウドもオンプレも成長した2015年
共同創業者のCarsten Thoma氏
Hybrisは1997年創業の電子コマース技術ソフトウェア企業だ。創業地はスイスだが、その後、共同創業者のThoma氏の地元ドイツ・ミュンヘンに本拠地を移した。2013年にSAPが買収し、その後は当初のオムニチャネルECサイト構築からマーケティング、CRM、セールス、サービス、さらには課金とテリトリーを広げている。
HybrisSummitはHybris時代から毎年開催するイベントで、これまでパートナーと顧客で分かれていたイベントを今年はじめて合体させた。登録者数は約2700人。過去最大の規模となった。
初日となった16日、基調講演のステージに立ったThoma氏は、この1年の成長を示す数字を幾つか挙げた。2015年Hybris事業の売上高は前年比44%増、クラウドは年間101%で成長し、ソフトウェアからの売り上げも同25%の成長率を維持した。
「クラウドはオンプレミスの売り上げを相殺していない」とThoma氏、クラウドかオンプレミスかではなく「ハイブリッドだ」という。2015年はまた、単年で740社の新規顧客を獲得するという好結果も残した。稼動を開始した顧客は300社。
この中には、Bose、Clarks USAなどがあり、British American TabaccoなどSAPの既存ユーザーによる導入もある。だが、販売して終わりではない。Thoma氏は「最も重要なのは顧客。プロジェクトデリバリの成功にフォーカスしている。われわれは長期的な成功を支援する」と述べる。
「これまでの“ベンダーと顧客”ではなく、パートナーの関係を構築したい」と会場に呼びかける。
SAPが“SAP Hybris”とブランドを残したように、HybrisはSAP全体からみても重要な事業だ。Thoma氏によると、2016年のビジョンとして、SAPではHANA Platform、Human Capital Management、IoT、Business Networkに並んでHybrisを最優先と位置付けているとのことだ。
チャネルも成長している。Hybrisでは現在パートナーが98.5%の実装を手掛けており、売上高にして1億ユーロを上回るとのこと。これは、前年から230%の成長に当たる。2015年はまた、2万7000人以上のコンサルタントがトレーニングを受けた。認定を取得したのは5000人に上る。
「顧客の成功とわれわれの成長にとって、パートナーエコシステムが不可欠だ」とThoma氏は聴講者に伝えた。