矢野経済研究所は3月10日、アウトソーシング世界市場調査の結果を発表した。経営の効率化やグローバルでのガバナンス強化などの観点から情報システム部門を統合する動きが進み、その際の取引の条件として事業継続計画(BCP)/災害復旧(DR)の整備が必須となるため、世界各国においてシステム運用管理・データセンターサービスへの需要が高まっているとした。
調査結果の主な内容は以下の通り。
グローバルアウトソーシング市場規模は、2019年度には1兆2383億4400万ドルと予測
この調査では、「システム開発・統合サービス」「システム運用管理・データセンターサービス」「BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)サービス」の3つのアウトソーシングサービスの世界市場をグローバルアウトソーシング市場と定義、市場規模は事業者売上高ベースで算出した。
グローバルアウトソーシング市場規模推移予測(矢野経済研究所推計。2015年度は見込値、2016年度以降は予測値)
調査の結果、世界のアウトソーシング事業者各社は各国にデリバリーセンターを設置し、グローバルでのサービス展開を加速しており、2014年度から2019年度までのグローバルアウトソーシング市場規模(事業者売上高ベース)は、年平均成長率(CAGR)5.1%で推移し、2019年度には1兆2383億4400万ドルに達すると予測している。
為替変動によるリスク回避や、ビジネスのグローバル化に伴い、企業の海外展開やM&Aで海外企業をグループ化する動きが拡大しており、企業活動におけるグローバル化が加速。これにより、経営の効率化やグローバルでのガバナンス強化などの観点から情報システムを開発・統合する動きが進んでいるほか、その際の取引の条件としてBCP/DRの整備が必須となるため、世界各国においてシステム運用管理・データセンターサービスへの需要が高まっているとした。
日本国内向けオフショアサービス市場規模は、2019年度には16億7800万ドルと予測
本調査においては、グローバルアウトソーシング市場の内数として、日本国内向けに提供された、オフショア(海外)拠点での「システム開発・統合サービス」と「BPOサービス」を日本国内向けオフショアサービス市場と定義した。市場規模は、アウトソーシング事業者が他社のオフショア拠点を活用した外注費用と自社のオフショア拠点を活用した内部費用を合算し、事業者コストベースで算出した。
日本国内向けオフショアサービス市場規模推移予測(矢野経済研究所推計。2015年度は見込値、2016年度以降は予測値)
調査の結果、2014年度から2019年度までの日本国内向けオフショアサービス市場規模(事業者コストベース)は、年平均成長率(CAGR)3.6%で推移し、2019年度に16億7800万ドルになると予測している。
日本国内のアウトソーシング事業者やユーザー企業においても、オフショア(海外)拠点における開発・統合サービスやBPOサービスの利用が拡大。オフショアでのカントリーリスクや人件費高騰などから、一部のアウトソーシング事業者ではリショアリング(再び拠点を日本に戻すこと)の動きが見られるものの、多くのアウトソーシング事業者が海外人材を活用した人件費の抑制に努めているとした。
調査は2015年12月から2016年2月にかけて実施され、SIer、システム運用保守事業者、データセンター事業者、BPO事業者などのグローバルアウトソーシング事業者に同社の専門研究員がヒアリングを行ったほか、文献調査も併用している。