矢野経済研究所は3月3日、国内の自治体向けソリューション市場の調査結果を発表した。2015年度は前年度比3.2%増の6297億円と予測。マイナンバー制度対応案件や情報セキュリティ対策などにより堅調という。
この調査では、自治体向けソリューションを地方自治体で導入される情報システムと定義、その市場規模としてはハードウェア、ソフトウェア、SI、サービスサポート、要員派遣などを含む事業者売上高ベースとした。地方自治体側の費目で見ると、機器購入費、委託費、安全対策費、各種研修費用などが該当するが、職員の人件費は含まない。
自治体向けソリューション市場規模推移予測(矢野経済研究所推計。2015年度は見込値、2016年度以降は予測値
調査の結果、2015年度の自治体向けソリューション市場規模は前年度比3.2%増の6297億円と見込まれている。国民への社会保障・税番号制度(マイナンバー)通知に伴い、自治体・事業者(ベンダー)の双方がマイナンバー制度対応案件に優先的に取り組んでいるほか、2015年3月に総務省から「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」の改訂版が公表され、それに対応したセキュリティ対策強化を進めている自治体も多いことなどを背景要因として挙げている。
これまでの概況をみると、2012年度は、住民基本台帳法の改正に伴うシステム改修があったものの、経費削減への取り組みが進んだことなどから、前年度比1.8%減となった。2013年度は自治体における経費削減の流れが継続する中、クラウド導入による改修コストや運用コストの低下なども進み、前年度比5.6%減と市場規模は縮小した。
2014年度は、2016年1月に全面施行となる社会保障・税番号制度(マイナンバー)への対応の必要性から、各自治体では、既存システムの更新時期や予算、職員などの人的資源、IT環境整備に関する方針などの個別の状況に応じてマイナンバー制度への準備が進められ、前年度比4.8%増となった。一方、制度対応への方針が決まらないことなどによる対応の遅れや、システム設計の段階で留まっている自治体も多かった。
2012年度から2019年度の自治体向けソリューション市場の年平均成長率(CAGR)は、0.2%減とほぼ横ばいで推移し、2019年度には6093億円になると予測している。
自治体クラウドは安価であり、かつ大幅なシステム運用コストの削減につながることから、市場全体としては縮小基調の可能性もあるが、一方で2020年東京五輪に向けた公共インフラ整備や老朽化への対策、訪日外国人客の増加による観光関連やセキュリティ対策の強化などの需要は増加していくといった予測に基づいている。
また、現段階では未知数であるものの、2019年度以降、マイナンバー制度活用における官民での情報連携による新たなサービスの創出が期待されるとした。
調査は2015年11月から2016年2月にかけて実施され、自治体向けソリューション提供事業者、全国の地方自治体などに同社の専門研究員がヒアリングを行ったほか、文献調査も併用している。