海外コメンタリー

テクノロジの力で平和な世界を--PeaceTech Summit 2016

Alex Howard (Special to TechRepublic) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2016-03-18 06:30

 米国平和研究所は2月、ワシントンD.C.で平和に向けた技術に関するカンファレンス「PeaceTech Summit 2016」を開催した。その会場で筆者が感じ取ったのは、データを通じてより良い世界を築くというロマンに満ちた考えが消え去ってはいないということだった。

 研究者らは、新たなテクノロジによって、かつてないほど早い段階で紛争の兆候を把握できるようになると考えているものの、政府機関や非政府機関は、理論から現実へどのように転換すればよいか、いまだに模索しているところだ。


写真左より米連邦緊急事態管理庁(FEMA)の最高情報責任者(CIO)Adrian Gardner氏、シカゴ大学データ科学及びパブリックポリシーセンターのディレクターRayid Ghani氏、Igarapé Instituteのセキュリティ及び開発スペシャリストRobert Muggah氏、PeaceTech Labのチーフデータサイエンティスト兼チーフエコノミストMichel Leonard氏
提供:Alex Howard/TechRepublic

 ビッグデータという言葉が2010年頃から大きな注目を集めるようになり、われわれとデータとの関係が複雑化していく一方、テクノロジ時代の驚くべき技術を用いることで、為政者は未来を洞察する力と、現時点での行動を決定付ける根拠を手にできるようになるという希望的観測も根強く残っている。政府の資金援助を得て実施されたある研究では、抗議運動がいつ発生するのかをTwitterのデータから予測できると示唆されている。

 政府機関や非政府機関は、エネルギー分野から医療分野に至るまでのさまざま分野における社会の建設的な変革に向けて、データの公開方法や利用方法で試行錯誤を重ねてきている。その一方で、かつてないほど多くの人々が既に、モバイル機器やセンサ、ソーシャルメディアによって生み出される膨大な量のデータを、企業や政府が差別や弾圧の目的で分析、利用できるという点を認識している。

 紛争の原因が宗教的不和か、気候変動か、領土侵略にあるかにかかわらず、「Open Situation Room Exchange」といったツールの開発者らは、平和を築き上げたいと考えている人々に向けて、より多くのデータを利用可能にするための取り組みを続けている。より多くの機器や市民がつながることによって、世界で起こっているものごとに関するより多くのデータが生み出される。この考えを推し進めていくと、こういったデータは対応能力の強化につながっていくはずだ。

 例えば、ブルンジ共和国における部族間抗争の拡大の兆候をいち早く把握し、アフリカの平和維持軍を展開して残虐行為を防ぐことも可能になるかもしれない。また、モバイル機器から収集された地理データをマイニングし、アフリカでの大衆革命に向けた機運の高まりを早期に把握できるようになるかもしれない。さらに内戦直後の国で初期の民主主義機構の確立を援助している開発担当者は、ソーシャルソフトウェアを活用して、憲法の制定に向けた世論の形成を実現できるかもしれない。

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