2050年、ビッグデータはいかにして90億人の食生活を支えるのか(後編)

Lyndsey Gilpin (TechRepublic) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2014-05-30 07:30

 前編に続いて、ビッグデータを農業に活用して食料問題に対処しようとする取り組みを紹介する。

データを活用する

 29歳になるChrisは2児の父親だ。彼は穏やかな性格をしており、にこやかに仕事をする。同氏はパーデュー大学を卒業した後、大学から家族経営の農場に戻ってきた数少ない人間だ。

 Chrisはケーブルや充電器、ルータが所狭しと並べられたコンバインの運転席によじ登った。Precision Plantingのモニタが光り、彼は農場のデータをざっと一覧した。今日はあまり特筆すべきこともないようだが、土壌地図のポテンシャルを確認するためにChrisは画面をスクロールさせていた。

 「Climate Basic」は誰でも無料で使えるものの、「Climate Pro」は現在、1エーカーあたり15ドルで販売されている。 The Climate Corporationはこれを使えば利益を1エーカーあたり平均100ドル増やせると述べている。なお、Jones一家はMonsantoが同社を買収する4年前から、同社の収穫保険に加入していた。

 Chrisは笑いながら、冗談っぽくBercaw氏の方を見やった。

 そして「くそったれのMonsantoめ、われわれは逃げられやしない!」と言った。


Jones一家が経営している農場のトウモロコシ畑の生産量を示すAg Leaderのモニタを見るChris。
提供:Lyndsey Gilpin/TechRepublic

 われわれがオフィスに戻った時、ChrisとBercaw氏がThe Climate Corporationのウェブサイトの機能をデモするために机の回りに集まってきた。Bercaw氏はThe Climate Corporationが買収される前からずっと同社の収穫保険のコンサルティング業務に従事しており、昔からJones一家と友だち付き合いをしてもいる。同氏は胸の部分に会社のロゴがプリントされたジャンパーを誇らしげに着ていた。

 Chrisのログインから数秒もしないうちにサイトが表示され、Jones農場の操業状況の一覧がスクロールされていった。画面の大半はGoogleの地図で占められ、片隅には天気の推移状況が表示されていた。Chrisはいくつかの数値を打ち込み、種の種類によって1エーカーあたりの収穫量がどの程度変わり、穀物価格にどのような影響が与えられるのかをチェックした。こういった計算やアルゴリズムの実行は、The Climate Corporationのウェブサイト側で行われる。また、ボックスをクリックするだけで土壌の湿度と生産量の過去のトレンドを、過去30年にまで遡って表示させることもできる。Chrisによると、このサイトは直感的ですっきりしており、出回っている他のほとんどのシステムよりも間違いなく使いやすいという。同システムの対象ユーザーがウェブの利用方法を完全に理解していない場合もある年齢層の高い農業従事者であるという点を考えた場合、これは重要だ。

 John Deereのシステムに起こった問題を解決しようとしても、電話で何時間もたらい回しにされていた以前とは異なり、The Climate Corporationは毎週と言ってもよいほどの頻度で自動的にアップデートを送信してくる。誰かと話したい場合でも、1〜2回電話をかけるだけで済む。また、The Climate Corporationがプロジェクトを展開する際には、責任者らがアドバイスを求めてくるともChrisは語った。

 これはChrisが当初イメージしていた農作業とは異なっている。この仕事はITであり、その需要はどんどん高まっている。

 Bercaw氏は「これによって、農業を敬遠する若者でも興味を示すようになる」と述べたうえで、「まさにハイテク産業の仕事なのだ」と語った。

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