本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、シスコシステムズの専務執行役員、高橋慎介氏と、米MobileIronの最高経営責任者(CEO)を務めるBarry Mainz氏の発言を紹介する。
「これまでうまく行かなかった中小企業向け事業に不退転の決意で挑みたい」(シスコシステムズ 高橋慎介 専務執行役員)
シスコシステムズが先ごろ、「Cisco Start」ブランドで展開する中小企業向けネットワーク機器製品群の強化、拡充を発表した。同社の専務執行役員でパートナー事業を統括する高橋氏の冒頭の発言は、Cisco Startシリーズによる中小企業向け事業への意気込みを語ったものである。
シスコが中小企業向けネットワーク機器製品群の新ブランドとして2015年9月に発表したCisco Startシリーズは、日本法人が米国本社に要請して製品開発した日本向けのソリューションである。
具体的には、従業員100人以下の企業に適したルータやスイッチ、アクセスポイント(AP)、ネットワークセキュリティ製品などで構成されており、「シンプル(簡単)ながらスマート(高機能)でセキュア(安全)なソリューション」であることを基本コンセプトとしている。
今回の強化・拡充の内容については関連記事を参照いただくとして、ここでは高橋氏が語ったCisco Startシリーズによる中小企業向け事業への意気込みに注目したい。
高橋氏は今回の発表会見の冒頭で、「シスコの中小企業向け事業はこれまで幾度か施策を打ち出して取り組んできたが、うまく行かなかった。改めて日本の経済を支えている中小企業がICTに求めているものは何かを熟慮し、不退転の決意で投入したのがCisco Startシリーズだ。
今回はその強化・拡充を図った。これにより、シスコが中小企業向け事業に本気で取り組んでいることをさらに強く訴えていきたい」と力を込めて語った。冒頭の発言はこのコメントのエッセンスである。
同氏によると、2015年以来のCisco Start事業は「非常に好調」とのこと。その好調ぶりを示すものとして、販売パートナー数の急増を挙げた。具体的には、2015年10月時点で60社だったCisco Start販売パートナー数が、今年3月時点で935社になったという。
しかもそのうち600社がこれまでシスコと取引がなかったところだそうだ。その意味では、Cisco Start事業はシスコのパートナー展開にも大きな影響を与えている。
筆者の知る限りでは、高橋氏は今回の会見がシスコ幹部としての初登場となる。経歴を見ると、日本IBMで中堅中小市場事業担当理事などの要職を歴任し、パートナー事業担当執行役員も務めた。その後、マイクロソフト(現・日本マイクロソフト)で執行役パートナービジネス営業統括本部長として、チャネル体制の変革をはじめとするパートナー関連のビジネス全般を統括したという。