磁気抵抗メモリ(MRAM:Magnetoresistive Random Access Memory)を手がける企業Everspin Technologiesが快進撃を続けている。Freescale Semiconductor(EverspinはFreescaleから分離独立している)が10年前にMRAM製品を世に送り出して以来、Everspinのテクノロジを採用する顧客は増え続け、今では500社を超えるまでになっている。そういった点で、MRAMはもはや傍流のテクノロジではなくなったと言えるだろう。
MRAMの特長は以下の通りだ。
- 書き込み時のレイテンシはDDR SDRAM並みであり、IntelとMicron Technologyが提唱する「3D XPoint」テクノロジよりもずっと高速に、フラッシュメモリとは比較にならないほど高速に動作する。
- フラッシュメモリや3D XPointメモリに比べると耐久性が極めて高い。
- DRAMと同様、バイト単位でのアクセスが可能(フラッシュメモリはページ単位でのアクセスとなる)。
- DIMM上のDRAMを置き換えることができる。ウェアレベリングやガベージコレクションのための複雑なコントローラが必要ない。
- 最新世代のMRAMは単純な3層プロセスで製造されているため、大量生産によってDRAMよりも安価に製造できる可能性を秘めている。
IBMは「OpenPOWER Summit 2016」における「Storage Class Memory」のデモでMRAMを使用していた。現在、MRAMが最も多く利用されているのは、コントローラやさまざまな組み込み機器中の高速な不揮発性メモリ(NVM)といった目に見えない部分だ。
なぜMRAMはDRAMを駆逐していないのか?
それにはいくつかの理由がある。MRAMはまだ発展中の若いテクノロジだ。一方、DRAMは50年、フラッシュメモリは30年の歴史を有している。このため、MRAMのビット当たりのコストはDRAMよりも高価なものとなっている。
また現時点では、記録密度もDRAMに劣っている。Everspinは2016年中に1Gビットのチップをサンプル出荷する予定だが、DDR4 DRAMは現在、8Gビットの製品が出荷されている。ただ、現行のMRAMは40ナノメートルプロセスという、数世代前の技術を用いて製造されているため、記録密度は大幅に向上する余地があると言えるだろう。
NVMをめぐる状況
NVMは、過去の記事でも述べている通り、SSDよりもはるかに大きな革命となるだろう。Microsoftといった大手企業が支持している点を考えると、革命が起こるかどうかではなく、いつ起こるのかという話になっているのだ。
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NVM競争はまだ始まったばかりであり、さまざまなNVM製品が速度や耐久性、消費電力、コストといった面で競い合っている。またIntelは、3D XPointを前面に押し出している。というのもこれは、単にメモリの話ではなく、システムのアップグレードにもかかわってくる、極めて大きな市場を生み出す可能性を秘めているためだ。
同種のテクノロジを手がける企業は、EverspinやIntelの他にもいくつかある。Adesto Technologiesは抵抗変化型メモリ(RRAM)を推し進めており、Crossbarも有望なテクノロジを有している。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。