中国にも検索サイトはいくつかあるが、百度で検索する人が圧倒的に多い。その百度の検索品質について疑問の声があがっている。「〓田系(〓は「蒲」のさんずいなし)」と呼ばれる、中国で非常に力のある病院グループと、中国で検索サイトトップの百度が問題の中心となった「魏則西事件」がきっかけだ。魏則西さんは、4月12日に21歳に珍しいタイプのがんで他界した男子大学生だ。
魏則西さんは、百度の検索結果で、広告を除いて最初に出てきた「武警北京総隊第二医院」で治療を受けていた。スタンフォード大との共同研究を謳う同医院に望みをかけ、20万元もの大金を払い入院したが治療の効果が出ず、その後の独自調査で詐欺だったことに気づく。他界する前、ネット上に「人間性における最大の‟悪”とは何か」という「中国医療と検索とカネ」について問題提起する文章を掲載した。これがネットで話題を呼ぶや否や、スタンフォード大も共同研究をしていないときっぱりと否定。同病院と、そのバックにいる「蒲田系」、それに百度が問題視された。
この事件以前から、百度の検索結果についてはネットユーザーから疑問の声があがっていた。またアドワーズ広告枠についても、多額の広告費をもらい、ニセモノの薬を上位に掲載するなど、中国中央電視台(CCTV)や新華社などの権威ある中国メディアから、何度も指摘されている。CCTVや新華社が扱った情報は、他のメディアも後追いするのでネットユーザーの目に入りやすくなる。ニセ薬やニセ医療と百度検索の関係の問題を多かれ少なかれ認知しているわけだ。
一方の蒲田系病院は中国各地で展開され、どの都市でも広告を見かける存在。その一方で、市民の間では知る人ぞ知る、行ってはいけない、いわくつきの病院として知られていた。さらに一見したところでは蒲田系でなくても、実は蒲田系の資本が入っている病院があることも明らかになっている。筆者も今回の事件を受けて、改めて蒲田系病院のリストを見てみたが、筆者の住む都市で広告をよくみる病院の名がたくさん連なっていた。このような事前知識をもった消費者が、(アドワーズ広告とは別に)通常の検索結果もカネの力で改変されているのではないかと疑うのは当然である。こうした中で、瞬間的ではあるが「百度を利用しない」という声がSNS上を駆け巡った。