松岡功の一言もの申す

SAPと提携したアップル、IBMとの関係は?

松岡功

2016-05-11 12:00

 AppleとSAPがモバイルを活用した業務アプリケーション分野で提携した。Appleは2年前にIBMとも似た内容で提携し、協業を進めている。果たしてIBMとの関係はどうなるのか。

お互いの思惑が一致したAppleとSAPの提携

 AppleとSAPの提携内容は、インメモリデータベース「SAP HANA」を活用した「iPhone/iPad」向けアプリケーションを取りそろえることで、企業において最適なモバイル利用環境を実現しようというのが狙いだ。詳細については関連記事を参照いただくとして、ここではこの提携に向けた両社トップのコメントを紹介しておこう。

 「今回の提携により、iOSのイノベーションおよびセキュリティと、業務ソフトにおけるSAPの深い専門知識が結合することで、企業におけるiPhone/iPadの使い方は大きく変化するだろう。SAPは業務アプリケーション分野のリーダーであり、商取引の76%にSAPのシステムが利用されている。iPhone/iPadのビジネス活用を追求している当社にとって、まさに理想的なパートナーだ」(AppleのTim Cook CEO)

 「HANAの強力な機能と、世界の市場をリードし企業にとっても最も安全なモバイルプラットフォームであるiOSを組み合わせることで、モバイルワーカーにいつでもどこでもリアルタイムの情報を提供できるようになる。両社は協力して未来を築き、世界中でビジネスの効率を高め、人々の暮らしを改善していけるように支援したい」(SAPのBill McDermott CEO)

 これらのコメントからも、ビジネス分野にさらに強く打って出たいAppleと、モバイル分野を強化したいSAPの両社の思惑が一致した提携であることがうかがえる。

iPhoneおよびiPad向けビジネスアプリで提携することを合意したAppleのCEOであるTim Cook氏(左)とSAPのCEOであるBill McDermott氏
提供:SAP
iPhoneおよびiPad向けビジネスアプリで提携することを合意したAppleのCEOであるTim Cook氏(左)とSAPのCEOであるBill McDermott氏(提供:SAP)

Apple、IBM、SAPの3社が連携して動き出すか

 さて、SAPと提携したAppleだが、IBMとの関係はどうなるのか。AppleとIBMが提携したのは2014年7月。以来、iPhone/iPad向け業務アプリケーションの共同開発に注力している。今回のSAPとの提携も似た内容だが、Appleから見て異なるのはHANAをベースにした取り組みであることだ。

 とはいえ、結果的にiPhone/iPad向け業務アプリケーションを拡充することが目的なので、IBMとSAPはAppleの提携相手として実績を競う形になる。ただし、IBMもSAPもこれまで長年培ってきた多くの企業顧客を保有していることから、まずはそれぞれの顧客を対象として実績を上げていきそうだ。それがAppleの思惑でもあるだろう。

 筆者が注目したいのは、その先だ。実は、AppleとIBMが提携した3カ月後の2014年10月に、IBMとSAPはクラウド事業で提携強化を図った。内容は、SAPが提供する基幹業務用途を対象にしたHANAベースのクラウドサービスを、IBMのクラウド基盤でも利用できるようにしたものだ。つまり、HANAはIBMにとっても適用できるプラットフォームなのである。そうなると、Apple、IBM、SAPの3社が協業して大きなプロジェクトをどんどん推進することもあり得るだろう。

 考えてみると、モバイルやユーザーエクスペリエンスに長けたApple、クラウドサービスとコグニティブ技術に注力するIBM、ERPをはじめとした業務アプリケーションとHANAに注力するSAPと、3社はそれぞれに得意分野を持ち、補完関係が成り立つようにも見て取れる。

 果たして、Apple、IBM、SAPの3社が連携して動き出すか。そうなると、IT業界そのものが大きく揺れ動き出すことになりそうだ。

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