ソラコム、IoT向けのネットワーク事業に参入--長距離通信が可能な省電力広域分野へ

NO BUDGET 山田竜司 (編集部)

2016-05-25 12:17

 ソラコムは5月25日、通信サービス向け企画を事業を展開するM2B通信企画への出資による資本業務提携により、IoT/M2Mに向け省電力、長距離の通信が可能な省電力広域(Low Power Wide Area:LPWA)ネットワークの方式である「LoRaWAN」を利用した通信事業に参入すると発表した。LoRaWANは低データ転送速度ながら、省電力で広域をカバーできるという特性を持つ技術とされ、インフラ監視などの用途を想定しているという。ソラコムからの出資額は非公表。

 M2Bは、2015年10月に設立。LoRaWANに、日本でいち早く取り組んでおり、業界団体「LoRa Alliance」における日本初のコントリビューターとして、LoRaWANでの日本規格の策定にも関わっている。ソラコムの代表取締役社長の玉川憲氏や、技術担当役員など数人がM2B通信企画の取締役に就任予定という。

 LoRaWANは、IBMや半導体ベンチャーのSemtech、Cisco Systemsなどがスポンサーを務めるLoRa Allianceが標準化したIoT向けの無線技術。免許不要のサブギガ帯である920MHzの無線技術の中でも、省電力で長距離伝送可能な通信方式であり、仕様がオープンであるという特徴を持つ。


免許不要のサブギガ帯の比較(ソラコム提供)

 LoRaWANは通信可能距離が5~15キロ程度あるため、山手線の大きさを想定した八王子市での実証実験では、LoRaWANのゲートウェイ5つで市全体をカバーできたという。

 出資によりソラコムはIoT通信基盤「SORACOM」において、移動体通信事業者として3G/LTEを利用したモバイル通信ネットワークの接続サービス「SORACOM Air」の提供に加え、IoT/M2M通信に適したLPWAネットワーク事業へ新たに参入する。

 これにより、用途に応じてそれぞれのネットワークの特性を生かし、複数のネットワーク方式をSORACOMプラットフォームで利用できるようにする。


構成図

 現在は、加速度センサを取り付けたデバイスを橋や送電施設などに取り付けて「(動くはずのないものが)動いたこと」がわかるよう監視するといった利用法や、ゴミ捨て場のゴミ箱にセンサを取り付け、必要な場所に回収車が向かうことで効率化するといった使い方を想定している。こうしたLoRaWANの利用方法はフランス、オランダ、イタリア、ロシアなどで事例をもつという。

 玉川氏は「IoTデバイスにとって、省電力性は大きな要素であり、LoRaWANをインフラ監視に利用した際、ボタン電池で動くようなデバイスで3年程度利用できることを想定している。モジュールは将来的には1000円以下で提供したい」と説明。今後はLoRaWANを利用したLPWAネットワークの実証実験を開始、商用利用にむけた取り組みを進めていくとしている。


LoRaモジュールの試作品を持つソラコムの代表取締役社長の玉川憲氏(中央) M2B通信企画 取締役 田中雅人氏(右) 取締役 渡辺 誠氏(左)
7月に開催されるソラコムの自社イベントSORACOM Conference “Discovery”ではLoRaWANなどの情報を含め、最新事例などがアップデートされるという

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