「標的型攻撃などの高度な攻撃への懸念が高まっている。DDoS攻撃も順調に伸びている」。DDoS攻撃をインラインでブロックする装置「Arbor Networks APS」や、トラフィックを監視して不正通信などを可視化する装置「Arbor Networks Spectrum」を手掛けるアーバーネットワークスは6月17日、年次セキュリティレポートの最新版で1月末に英語版の配布を開始した「Worldwide Infrastructure Security Report Volume XI」(WISR 11)について、内容を紹介した。
米Arbor Networksでセキュリティアーキテクト兼ASERTリサーチマネージャーを務めるMarc Eisenbarth氏
WISRレポートの最新版では、アンケート調査結果や、実環境から収集したネットワークデータをもとに、2015年の1年間のセキュリティの動向をまとめている。PDF形式のファイルで、分量は120ページある。アンケートの実施時期は2015年10月で、同社の顧客が対象。実環境のデータは、インターネット上に配置したセンサのほか、顧客先に設置して実運用している装置から収集した。
アンケート調査結果から見えた2015年のトレンドの1つが、標的型攻撃だ。標的型攻撃を検知した企業の割合は、前回調査時の18%から23%へと増えた。企業の懸念事項の第1位も、標的型攻撃だ。こうした状況を受けて、標的型攻撃に対処するCSIRT(インシデント対応チーム)を編成することが企業のトレンドとなっている。回答者の85%が、侵害を受けた時の対応プロセスを規定している。
DDoS攻撃が拡大し続けている。1回の攻撃で使われた最大帯域は2012年以降に急伸した
DDoS攻撃も、例年通り拡大し続けている。1回当たりのDDoS攻撃のトラフィックのうち最大のものは、500Gビット/秒に達した。初回調査時(11年前)の8Gビット/秒と比べると、帯域は60倍以上になった。業務ネットワークの帯域を枯渇させるだけのDDoS攻撃を検知したデータセンターは、前回調査時の33%から半数以上へと増えた。
日本は、DDoS攻撃の攻撃元となった国としては、中国と米国に次ぐ3位だった。米Arbor Networksでセキュリティアーキテクト兼ASERTリサーチマネージャーを務めるMarc Eisenbarth氏は、「日本はネットワークの帯域幅が潤沢。DDoS攻撃者にとって悪用されやすい」と推測する。
DDoS攻撃の主な標的は、引き続きファイアウォールやIPS(不正侵入防止システム)などの既存のネットワーク装置だ。半数を超える企業やデータセンターが、DDoS攻撃によってデバイス障害が発生したと報告した。
WISRレポートを作成したのは、同社の中のASERT(Arbor Security Engineering and Response Team)と呼ぶ組織。標的型攻撃などの高度な攻撃にフォーカスした解析チームで、1日当たり10万個のマルウエア検体を入手して解析している。マルウエア検体はサンドボックス上で実行し、その振る舞いや通信先となるC&Cサーバなどの特徴をデータベース化している。
標的型攻撃にフォーカスした解析チーム「ASERT」が年次分析レポートを作成している