アマゾンウェブサービスジャパンは6月1~3日に、都内でAmazon Web Services(AWS)に最新技術や導入事例、活用方法などを紹介するカンファレンス「AWS Summit Tokyo 2016」を開催した。本稿ではAWSの国内導入企業の事例を紹介したエグゼクティブトラックの様子をお送りする。
新規事業「auでんき」をAWSでサービスイン:KDDI
KDDI 商品・CS統括本部 サービス企画本部長 中桐功一朗氏(左)とKDDI プラットフォーム開発本部 クラウドサービス開発部 フレームワーク グループリーダー 平岡庸博氏(右)
KDDIは、電力小売自由化に伴い4月に「auでんき」の提供を開始し、電力ビジネスに参入した。同社の売り上げは、個人向け通信サービスが3兆3306億円と全体売上高の7割を占めている。現在、通信市場は順調ながらも国内の人口問題も相まって、今後の見通しは暗い。
そのため、同社は新たな成長軸として、ライフデザイン企業への変革を目指している。KDDI 商品・CS統括本部 サービス企画本部長 中桐功一朗氏は、「電気や食品、保険といった生活に密着したサービス提供や、1447万人(3月末時点)の会員を持つ『auスマートパス』と全国約2500店舗のauショップをつなげたオムニチャネル化で“au経済圏”の最大化を図る」と説明した。
「auでんき」は全国対応、シンプルな料金設定、スマートフォン利用料とのバリューセット、アプリケーションによる使用量の可視化といった特徴を持つ。このアプリケーションを経済圏のポータルサイトとして、ECサイトなどと連携させていくのが同社の戦略だ。このアプリケーションの開発に、AWSを使った。
KDDIが開発した「auでんきアプリ」
一般的に新規事業立ち上げは1年以上かかることも珍しくないが、今回、開発がスタートしたのは半年前。加えて、社内に通信に関するプロフェッショナルはいて“電気のプロ”がメンバーにいなかった。そこでたどり着いたのが「脱・請負型開発とAWSの利用」だと平岡氏は説明する。「自分たちで設計し、パートナーと一緒に作る『アジャイルな継続的開発』を実践するには、AWSを使うしか答えがなかった」(KDDI プラットフォーム開発本部 クラウドサービス開発部 フレームワーク グループリーダー 平岡庸博氏)
AWSを使ったことで、開発スタートからローンチまでの期間は3カ月程度になり、開発コストも3分の2に圧縮できたという。AWSを選択するメリットとして、平岡氏は「リソース調達の自由度が広がり、豊富なサービスや機能の実装、仕様変更の容易性を実現できた」と説明している。