日本オラクルは7月5日、記者発表会を開催し、垂直統合型システム「Exadata」を中心としたハードウェア事業の2017年度事業戦略を発表した。上場500社のうち、まだExadataを導入していないという80%の企業群や、1000~2000台と同社が試算するメインフレームのExadataへの移行需要を狙い、事業拡大を図る。
クラウドシフトが進む一方、「ハードウェア事業に大きなチャンスがあることが分かった」と話すのは、日本オラクルの執行役員、クラウド・システム事業統括の山本恭典氏だ。
2016年度第4四半期(2016年3~5月)業績でのハードウェア売上高は、対前年度比47.6%増の74億円と伸び、「Oracle/Sun統合以来の高い数字」を記録したとのこと。特に、Exadataとバックアップ機、メインフレーム向けテープストレージなどが伸びたという。
Exadataの未導入層やメインフレームだけでなく、ここにきてERP(統合基幹業務システム)を中心とするアプリケーションの載せ替え需要も拡大してきているという。製造業の現場を支えるPLM(プロダクトライフサイクル管理)分野もその1つ。導入するソフトウェアは製造業にとっての本業を支えるものであるため、投資金額も大きくなる。
オープン系OS向けのリレーショナルデータベース(RDBMS)分野で49%という高いシェアを持つOracle Database。その強みを生かし、Oracle Databaseに最適化したハードウェアを開発、提供することで、エンタープライズ向けシステム需要を取り込む考えだ。「データベースからハードウェアまでOracleにベンダーロックインしてしまう、といった声が数年前まではあったが、ここにきて処理が速いがいいという考え方にユーザーが変わってきている」と山本氏は説明している。
こうした背景で、2017年度の国内におけるハードウェア戦略の柱は3つ――専門組織の立ち上げ、エンタープライズクラウド推進、パートナーエコシステム強化だ。
柱になるのが、専門組織の立ち上げだ。詳細は下図の通り。RDBMSのシェアを最大限に利用するための組織として「Engineered Systems営業本部」を立ち上げる。Oracleのソフトウェアに最適化したパフォーマンス、可用性、信頼性を訴求する考えだ。
技術的に新しい側面があるのは「Server営業本部」と言える。CPUにデータベースをはじめとしたソフトウェアを組み込み、高速化する「ソフトウェアインシリコン」を実践する取り組みである「Engineered System in Chip」。日本オラクルは、これを実現する製品として2015年12月にSPARC M7プロセッサを発表した。Server営業本部は、これを推進する初のSPARC/Solaris専門チームという位置づけだ。
このほか「Backup & Recovery営業本部」は、Oracle Databaseのバックアップに最適なストレージ「Oracle Zero Data Loss Recovery Appliance」「Sun ZFS Backup Appliance」を中心に事業を展開する。
オラクルのハードウェア戦略の柱は新たな組織体制の構築
柱の2つ目であるエンタープライズクラウド推進では、オンプレミスとクラウド間でアーキテクチャや技術、スキルを同じものに合わせる取り組みを強化する。特に、大規模システムを運用する企業において、こうした要望が強いという。
3つ目のパートナーエコシステム強化では、顧客がシステムインテグレーション(SI)パートナーによるサポートを求めているという前提に立ち、特にSIパートナーとの協力関係をより重視していく。