セキュリティソフトウェア市場はいまだ成長を続けているものの、セキュリティに取り組む企業の姿勢は変わりつつある。
2015年のセキュリティ市場の規模は世界全体で221億ドル近くに達し、2014年に比べて3.7%増加した。
企業は、セキュリティ情報とイベントの管理(SIEM)技術への投資によって、ハッカーによる容赦ない攻撃から身を守ろうとしている。この技術は、セキュリティイベントをリアルタイムで収集、分析することで、脅威の検知とセキュリティインシデントへの対応を実施するというものだ。Gartnerのアナリストらによると、この分野での投資は前年比15.8%増であり、他のセキュリティ分野よりも早い勢いで成長しているという。その一方、コンシューマー向けのセキュリティソフトウェアに対する投資は急激に落ち込んでおり、前年比5.9%減だった。
Gartnerは、セキュリティ侵害の抑止のみに着目した技術に対する興味が減少している一方で、セキュリティ侵害の検知と対応を可能にする技術に対する興味が高まってきていると述べている。
Gartnerは、「企業はセキュリティ関連の予算を、セキュリティ侵害の抑止から、その予知や検知、対応にシフトしているため、セキュリティベンダーもこのシフトに対応する必要がある」としたうえで、成長分野としてアイデンティティの統治や統制とともに、データ流出の抑止に向けた技術を挙げている。
Gartnerによると、2015年通期におけるセキュリティソフトウェアの売上高では、ベンダー上位5社のシェアが前年に比べて3.1ポイント減少し、37.6%になったという。またこれら5社のうち、売上高を伸ばしたのはIBMだけであり、その他の4社では売上高が減少したという。
提供:Gartner(2016年7月)
Gartnerの主席リサーチアナリストSid Deshpande氏は、「複雑な製品ポートフォリオを有する大規模ベンダーの売上高が減少、あるいは微増にとどまっているのとは対照的に、より専門に特化した、小規模セキュリティソフトウェアベンダーによる市場の成長と破壊が生み出されている」と述べている。
こうした変化が起こっている理由の1つとして、大規模ベンダーが複雑なポートフォリオを有しており、そのうちのいくつかは減速しているレガシー市場のものである一方、小規模ベンダーはあらゆるものに対するソリューションを提供する必要がないため、特定のセキュリティ分野に的を絞って効率を追求できる点が挙げられる。
Symantecは1位の座にとどまっているが、セキュリティソフトウェアの売上高は6.2%低下し、34億ドルになった。2015年にGartnerは、Symantecの売上高の74%がウイルス対策ソフトやスパイウェア対策ソフト、パーソナルファイアウォール、アプリケーション制御ソフトといったコンシューマー向け技術とエンドポイント保護(EPP)技術から成り立っていると述べた。こういった製品の売上高合計は前年に比べて7%減少し、Symantecの売上高減の主な原因になったという。
Intelのセキュリティソフトウェア関連の売上高も2015年に4.1%低下し、17億5100万ドルとなった。Gartnerによると、この低下の原因はSymantecと同様、Intelの2015年におけるセキュリティ関連の売上高の75%を占めるコンシューマー市場とEPP市場の縮小にあるという。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。