本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、日本オラクルの桐生卓 常務執行役員と、シマンテックの坂尻浩孝 執行役員CTOの発言を紹介する。
「企業の予算管理は“Beyond Finance”の時代に突入した」 (日本オラクル 桐生卓 常務執行役員)
日本オラクルの桐生卓 常務執行役員
日本オラクルが先ごろ、全社的な予算管理の高度化と効率化を支援するSaaS「Oracle Enterprise Planning and Budgeting Cloud Service」(EPBCS)を提供開始すると発表した。同社の常務執行役員でクラウド・アプリケーション事業統括ERP/EPMクラウド事業本部長を務める桐生氏の冒頭の発言は、その発表会見で、EPBCSが予算管理をはじめとした管理会計(Enterprise Performance Management:EPM)の利用形態を変えることを強調したものである。
EPBCSは、各部門の円滑な予算策定を支援しつつ、それらを全社共通の基盤上で管理することにより、全社的な予算の見直しも同じ仕組みでできるようにしたEPMアプリケーションである。個々の事業や部門の投資判断が組織全体で最適化されるだけでなく、予算管理サイクルの短期化、策定プランの見直し頻度向上、ビジネスの実態に即した実行計画の立案が可能になるとしている。
桐生氏が語った「Beyond Finance」という言葉は、「経理部門や経営企画部門だけでなく全社に広げていく」ことを意図したものである。つまり、冒頭の発言は「企業において予算管理(EPM)はこれまで経理部門など一部だけで行われていたが、これからは全社を挙げて活用していくべきだ」というメッセージである。そして、それを実現するのがEPBCSというわけだ。
では、なぜEPMを全社で活用すべきなのか。桐生氏は「変化の激しい経営環境の中で、全社的にEPMの高度化を図ることによって、企業の競争優位性を一段と発揮していくためだ」と答えた。図はその構造を分かりやすく示したものである。企業の会計業務において、ERPは日々の事業活動の標準化や品質向上を図るためのものだが、EPMはERPをベースに競争優位性をもたらすものとなる。つまり、EPMの取り組みが企業競争力の違いを生むわけである。
EPMの活用は企業に競争優位性をもたらす(出典:日本オラクルの資料)