矢野経済研究所は8月22日、国内ERP市場動向に関する調査結果を発表した。マイナンバー対応などの需要で前年比8%程度増加するという結果が出た。この調査では、基幹業務の一部機能のみを持ち、ERPパッケージのモジュール(構成要素)となるパッケージソフトウェアも対象としたとのこと。
ERPパッケージライセンス市場の市場規模推移と予測
2015年の国内ERPパッケージライセンス市場は、エンドユーザー渡し価格ベースで1111億円となった。前年比では8.0%の増加で、2014年の伸び率(前年比6.2%増)を上回っており、堅調な成長を維持している。
2015年はユーザー企業の業績が好調だったこと、一部のERPベンダーが2015年10月に施行されたマイナンバー制度をきっかけとした人事分野での需要獲得に成功したことなどが、成長の理由になっていると同社では考えている。なお、マイナンバーを管理する機能そのものは、ほとんどのERPパッケージにおいては通常のバージョンアップで対応したため、直接的に売上増となったわけではないが、マイナンバー制度への関心は高かったため、セミナー開催やキャンペーンなどのきっかけを作り、自社製品へのリプレイス促進を図ったベンダーもあったとのこと。
本市場に対する法改正などの状況をみると、ERPへの投資拡大につながると期待されていた消費税増税と軽減税率の導入の先送りが決まり、2016年は影響は少ないといえる。なお、2016年から適用となった改正電子帳簿保存法に対応し、証憑と会計データの連携ソリューションを提供するERPベンダーはあるが、マイナンバー制度や消費税増税への対応と違って一斉に行うものではなく、ユーザー企業の都合を優先させた断続的な導入になると考えられる。
その一方で、経営に貢献する基盤の構築というERP本来の目的で基幹システムを見直すニーズがERPパッケージライセンス市場を支えているという。会計や人事分野でのグループ導入や、販売管理や生産管理分野での個別開発からERPパッケージへのリプレイスは継続しており、2016年には前年比8.1%増の1200億7000万円(エンドユーザ渡し価格ベース)と予測した。
ERPへの投資は経済動向による影響も受けやすく、2016年以降はイギリスのEU離脱問題や円高、中国を初めとする新興国の景気悪化、国内個人消費の不振など経済全般的に不安定な色合いが強まっており、ERP市場の成長を鈍化させる懸念がある。
しかし、単なる老朽化による情報システムのリプレイス目的のみではなく、不安定な経済環境の中で変化に対応し、経営を支えるITプラットフォームを構築するという、基幹システム本来の目的でERPを再構築するユーザー企業も増えている。それを受けて大手ERPベンダーではクラウドを基盤とするほか、IoTやモバイル、コンシューマライゼーション(一般消費者向けに開発された利便性の高いIT技術を企業向けのIT分野に取り込むこと)など新世代のテクノロジを採用した新製品をリリースしている。とりわけ、導入スピードが短く柔軟性の高いクラウドサービスの利用も拡大しており、クラウド化はERPのトレンドの一つとなっていると同社では考えている。
調査は4月から7月にかけて、ERPパッケージベンダーへの同社専門研究員による直接面談の形で実施。