ビッグデータアナリティクスの取り組みは、正規化されていないデータからレポートやダッシュボードの情報を生成することから始まったが、コグニティブコンピューティングは、この技術をさらに実のあるものに変えつつある。実際、コグニティブコンピューティング市場の売上は、2020年には137億ドルに達し、2015~2020年の年平均成長率は33.1%になると予想されている。
コグニティブコンピューティングとは何か?得られるメリットは?
コグニティブコンピューティングは人工知能の1分野だ。このテクノロジは、科学とエンジニアリングの原理を組み合わせて、データを取り込んで学習し、人間の精神の学習と思考のプロセスをエミュレートする「知的」な機械を作ろうと試みるものだ。
とはいえ、コグニティブコンピューティングは、人間の精神ほど複雑ではなく、洗練されていない上に、柔軟性でも人に劣る。研究者らは10年近く前に、小型ほ乳類の脳に似た働きをするコンピュータを作ろうとして苦戦したときに、このことを理解した。
それでもコグニティブコンピューティングは、つかみ所のない問題に取り組む人間の思考力を大きく増幅することができる。その代表例が「IBM Watson」であり、特に医療分野でビッグデータを利用したいくつかの革新的な取り組みが進められている。
米国の医師が1年間に下す医療診断のうち、約5%が間違っていると言われている。有数のがん研究センターであるニューヨークのMemorial Sloan Kettering病院では、この問題に取り組み、また診断のプロセスを改善するため、IBM Watsonを利用して60万5000件の医学的エビデンス、200万ページのテキスト、2万5000件のトレーニング用事例を分析させ、1万4700時間の看護師の支援を受けた実地訓練で、判断の精度を向上させてきた。
IBMはそのプロセスを次のように説明している。医師が症状やその他の要因をシステムに入力すると、Watsonは重要な情報を特定すると同時に、患者のデータをマイニングして、関連する家族の病歴や現在の治療、その他の既存の症状を特定する。また、 検査結果を調査し、仮説を立てる。Watsonが提示する情報は最終的な診断ではなく、その情報は医師が病状や治療している患者を理解しようとする際に利用される。
これは、人間の精神が持つ柔軟性、判断の速さ、能力と、人間の脳では与えられた時間内に処理できないあらゆる形態の情報を処理できるコンピュータの能力を組み合わせた、人間と機械の共同作業だ。
IBMの「Watson」は、コグニティブコンピューティングを実際に応用している代表例の1つだ。
提供:IBM