日本ヒューレット・パッカード(HPE)は8月25日、ストレージ製品のローエンドを補強する2つの新製品を国内で同日出荷すると発表した。HPE本社で開いた記者説明会では、2016年末まで継続されるエントリストレージ向けキャンペーンについても説明した。
今回、発表したのはエントリ向けストレージアレイである「HPE StorgeVirtual 3200」とフラッシュメモリとハードディスクのハイブリッドストレージである「HPE MSA 2042」の2つの機種だ。
どちらも、SAN(Storage Area Network)としてサーバのデータストアとして稼働するストレージアレイだ。StorageVirtual 3200は4000の下位機種、MSA 2042はMSA 2040の後継機種という位置付けだが、それぞれの位置付けは必要とされるユースケースが違うと説明する。
StorageVirtual 3200の筐体
従来型SANとスケールアップできるSAN
MSA 2042はModular Smart Arrayという名前が示すように、2.5インチもしくは3.5インチのドライブをモジュールとみなして構成するサーバ向けの共有ストレージだ。従来のワークロードがそれほど変化しない統合基幹業務システム(ERP)などのストレージ向きと言えるだろう。
これに対してStorageVirtual 3200は、HPが2008年に買収したLeftHand NetworksのSANがHPの中でStorage Virtualとして製品ラインに加わったもので、SDS(Software Defined Storage)としてサーバから直結もしくはスイッチ経由でストレージに接続するSANである。
ただ、こちらはスケールアップとスケールアウトに対応と解説したように、ストレージが追加された際に設定の変更やチューニングが不要となるスケールアップの機能を持っているところが特徴だ。
コントローラはそのままで、ドライブを追加することで性能と容量を上げるスケールアップに対して、ハイパーコンバージドインフラストラクチャにみられるように、コンピュートノードとストレージを同じユニットで稼働させ、必要に応じてユニットを追加することで、性能と容量をリニアに上げられる点が大きな特徴だ。
実際に、HPEのソリューションであるハイパーコンバージドインフラストラクチャである「HPE Hyper Converged 380」なども同じアーキテクチャである。ただし、今回のStorageVirtual 3200においてスケールアウトを実現するためには、次期バージョンのソフトウェアが必要であるという。つまり複数台のユニットをそろえてスケールアウトさせようとする場合、次期版を待つ必要がある。
また、今回のStorageVirtual 3200は、プロセッサとしてARMの64ビットのCPUを利用しているという。ここでも、コンポーネントのコストを下げるための努力がなされているということだろう。
ストレージ製品導入を促す中小企業向けキャンペーン発表
ストレージ製品として従来のアプリケーション用、クラウドや仮想化に適した利用向けとエントリ向けに2機種を用意したHPEだが、そもそも中小企業にとってストレージ製品が買うための価格というハードルが高いということは認識されているようだ。そのために今回の製品発表に合せて「新ストレージスタートダッシュパッケージ」キャンペーンを発表した。
これはStorageVirtual 3200のiSCSI構成モデル(実効2.3TBモデル)定価152万9000円を98万円に、MSA 3200のフラッシュとハードディスクハイブリッドモデル(実効3.6TB SAS HDD + 800GB SSD)定価230万6000円を149万8000円にするもの。8月25日から2016年年末までの期間限定キャンペーンとなる。
エントリモデルで市場シェアを守り、ハイパーコンバージドにつなげる戦略
HPEの分析によれば、フラッシュメモリによるストレージは年々出荷台数が増えており、アプリケーションの高速化のニーズは増え続けているという。これはEMCが2016年をフラッシュストレージの元年と呼び、製品のSSD化を強力に推進していることと同様の認識をしているようだ。
ただ、中堅規模の企業では、オールフラッシュストレージよりもハイブリッドを希望しているというリサーチを基に、今回のMSAのハイブリッドモデルを導入したという。
3200のモジュールを外した状態。電源までがモジュール化されているわけではない
また中小企業においては管理の容易さを求める声も強く、ハイパーコンバージドインフラストラクチャによるストレージとクラスタ製品が仮想化を中心にして大きな伸びを示しているという。HPEとしては今後に大きな成長が見込まれるハイパーコンバージドにつながるSANのエントリモデルで、大企業に比べて新しいシステムの導入が遅れがちな中小企業市場においても、シェアを守ろうという戦略だろう。
ただ、ハイパーコンバージドで先行するNutanixもオールフラッシュやGPUモデルなどバリエーションを拡げている。HPEがCompaq時代からのProLiantサーバの信頼性やサービスだけで、先行するNutanixを追い抜けるとは思えない。HPE発のより野心的なハイパーコンバージド製品が待たれるところである。