エントリモデルでシェアを守りハイパーコンバージドへ--HPEサーバ戦略を分析

松下康之 2016年08月30日 07時30分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 日本ヒューレット・パッカード(HPE)は8月25日、ストレージ製品のローエンドを補強する2つの新製品を国内で同日出荷すると発表した。HPE本社で開いた記者説明会では、2016年末まで継続されるエントリストレージ向けキャンペーンについても説明した。

 今回、発表したのはエントリ向けストレージアレイである「HPE StorgeVirtual 3200」とフラッシュメモリとハードディスクのハイブリッドストレージである「HPE MSA 2042」の2つの機種だ。

 どちらも、SAN(Storage Area Network)としてサーバのデータストアとして稼働するストレージアレイだ。StorageVirtual 3200は4000の下位機種、MSA 2042はMSA 2040の後継機種という位置付けだが、それぞれの位置付けは必要とされるユースケースが違うと説明する。

StorageVirtual 3200の筐体
StorageVirtual 3200の筐体

従来型SANとスケールアップできるSAN

 MSA 2042はModular Smart Arrayという名前が示すように、2.5インチもしくは3.5インチのドライブをモジュールとみなして構成するサーバ向けの共有ストレージだ。従来のワークロードがそれほど変化しない統合基幹業務システム(ERP)などのストレージ向きと言えるだろう。

 これに対してStorageVirtual 3200は、HPが2008年に買収したLeftHand NetworksのSANがHPの中でStorage Virtualとして製品ラインに加わったもので、SDS(Software Defined Storage)としてサーバから直結もしくはスイッチ経由でストレージに接続するSANである。

 ただ、こちらはスケールアップとスケールアウトに対応と解説したように、ストレージが追加された際に設定の変更やチューニングが不要となるスケールアップの機能を持っているところが特徴だ。

 コントローラはそのままで、ドライブを追加することで性能と容量を上げるスケールアップに対して、ハイパーコンバージドインフラストラクチャにみられるように、コンピュートノードとストレージを同じユニットで稼働させ、必要に応じてユニットを追加することで、性能と容量をリニアに上げられる点が大きな特徴だ。

 実際に、HPEのソリューションであるハイパーコンバージドインフラストラクチャである「HPE Hyper Converged 380」なども同じアーキテクチャである。ただし、今回のStorageVirtual 3200においてスケールアウトを実現するためには、次期バージョンのソフトウェアが必要であるという。つまり複数台のユニットをそろえてスケールアウトさせようとする場合、次期版を待つ必要がある。

 また、今回のStorageVirtual 3200は、プロセッサとしてARMの64ビットのCPUを利用しているという。ここでも、コンポーネントのコストを下げるための努力がなされているということだろう。

ストレージ製品導入を促す中小企業向けキャンペーン発表

 ストレージ製品として従来のアプリケーション用、クラウドや仮想化に適した利用向けとエントリ向けに2機種を用意したHPEだが、そもそも中小企業にとってストレージ製品が買うための価格というハードルが高いということは認識されているようだ。そのために今回の製品発表に合せて「新ストレージスタートダッシュパッケージ」キャンペーンを発表した。

 これはStorageVirtual 3200のiSCSI構成モデル(実効2.3TBモデル)定価152万9000円を98万円に、MSA 3200のフラッシュとハードディスクハイブリッドモデル(実効3.6TB SAS HDD + 800GB SSD)定価230万6000円を149万8000円にするもの。8月25日から2016年年末までの期間限定キャンペーンとなる。

エントリモデルで市場シェアを守り、ハイパーコンバージドにつなげる戦略

 HPEの分析によれば、フラッシュメモリによるストレージは年々出荷台数が増えており、アプリケーションの高速化のニーズは増え続けているという。これはEMCが2016年をフラッシュストレージの元年と呼び、製品のSSD化を強力に推進していることと同様の認識をしているようだ。

 ただ、中堅規模の企業では、オールフラッシュストレージよりもハイブリッドを希望しているというリサーチを基に、今回のMSAのハイブリッドモデルを導入したという。

3200のモジュールを外した状態。電源までがモジュール化されているわけではない。
3200のモジュールを外した状態。電源までがモジュール化されているわけではない

 また中小企業においては管理の容易さを求める声も強く、ハイパーコンバージドインフラストラクチャによるストレージとクラスタ製品が仮想化を中心にして大きな伸びを示しているという。HPEとしては今後に大きな成長が見込まれるハイパーコンバージドにつながるSANのエントリモデルで、大企業に比べて新しいシステムの導入が遅れがちな中小企業市場においても、シェアを守ろうという戦略だろう。

 ただ、ハイパーコンバージドで先行するNutanixもオールフラッシュやGPUモデルなどバリエーションを拡げている。HPEがCompaq時代からのProLiantサーバの信頼性やサービスだけで、先行するNutanixを追い抜けるとは思えない。HPE発のより野心的なハイパーコンバージド製品が待たれるところである。

ZDNet Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んだ方に

関連ホワイトペーパー

連載

CIO
シェアリングエコノミーの衝撃
デジタル“失敗学”
コンサルティング現場のカラクリ
Rethink Internet:インターネット再考
インシデントをもたらすヒューマンエラー
トランザクションの今昔物語
エリック松永のデジタルIQ道場
研究現場から見たAI
Fintechの正体
米ZDNet編集長Larryの独り言
大木豊成「仕事で使うアップルのトリセツ」
山本雅史「ハードから読み解くITトレンド放談」
田中克己「展望2020年のIT企業」
松岡功「一言もの申す」
松岡功「今週の明言」
内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」
林 雅之「デジタル未来からの手紙」
谷川耕一「エンプラITならこれは知っとけ」
大河原克行「エンプラ徒然」
内製化とユーザー体験の関係
「プロジェクトマネジメント」の解き方
ITは「ひみつ道具」の夢を見る
セキュリティ
エンドポイントセキュリティの4つの「基礎」
企業セキュリティの歩き方
サイバーセキュリティ未来考
ネットワークセキュリティの要諦
セキュリティの論点
スペシャル
エンタープライズAIの隆盛
インシュアテックで変わる保険業界
顧客は勝手に育たない--MAツール導入の心得
「ひとり情シス」の本当のところ
ざっくり解決!SNS担当者お悩み相談室
生産性向上に効くビジネスITツール最前線
ざっくりわかるSNSマーケティング入門
課題解決のためのUI/UX
誰もが開発者になる時代 ~業務システム開発の現場を行く~
「Windows 10」法人導入の手引き
ソフトウェア開発パラダイムの進化
エンタープライズトレンド
10の事情
座談会@ZDNet
Dr.津田のクラウドトップガン対談
Gartner Symposium
IBM World of Watson
de:code
Sapphire Now
VMworld
Microsoft WPC
Microsoft Connect()
HPE Discover
Oracle OpenWorld
Dell Technologies World
AWS re:Invent
AWS Summit
PTC LiveWorx
吉田行男「より賢く活用するためのOSS最新動向」
古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」
中国ビジネス四方山話
ベトナムでビジネス
日本株展望
企業決算
このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]