英調査会社のIHS Markitは、モバイル回線の性能を一般消費者の目線でフィールド調査する情報サービス「RootMetrics」を、北米と英国を中心に各国で提供している。直近の6月には日本でも調査を実施し、調査結果の一部を分かりやすくスコア化して8月に公開した。
北米と英国で大規模に調査を実施しているほか、欧州4カ国(アイルランド、スペイン、スウェーデン、フランス)や韓国でも調査を実施している。これらに加えて、日本でも調査を開始した。日本では、NTTドコモ、ソフトバンクモバイル、KDDI(au)のモバイル3キャリアの性能を調べている。
英IHS Markit、RootMetricsでChief Revenue Officer(最高売上責任者)を務めるScott Brady氏
「日本はモバイル回線の性能が高い地域として知られている。日本の状況を調査しておくことには価値がある。5G(次世代移動通信システム)への移行や東京オリンピックの開催によって、どう性能が変わっていくかを調べたい」
英IHS MarkitのRootMetrics分野でChief Revenue Officer(最高売上責任者)を務めるScott Brady氏は、日本でモバイル回線性能の調査を始めた狙いをこう説明する。
RootMetricsの特徴をBrady氏は、「どこのキャリアからも独立しており、消費者の目線に立って実際にフィールドで科学的な調査を実施すること」と説明する。消費者と同じ環境を得るため、ショップで実際に購入した端末を使い、通話やデータ通信の体験性能を測定する仕組みだ。
フィールド調査結果はキャリアにも消費者にも価値がある
実際にフィールドで調査していることから、キャリアから見れば競合他社と比べて自社のモバイル回線の性能がどうなっているかが分かる。「コアネットワークの外側にあるインターネット接続用のルータ機器の問題など、内部調査だけでは気が付きにくい問題点に気付くことができる」(Brady氏)点が強みだ。
こうした需要を見込んで、キャリアやインフラ事業者などモバイル通信に関わるさまざまな会社に対して、有償の情報提供サービスを提供している。調査は6カ月に1回実施し、年間のサブスクリプション契約を交わして詳細な調査データを提供する。サマリ(要約)レポートも提供するが、需要に応じて細かい個々の調査データも提供する。
キャリアのすべてが潜在顧客となるが、すべてのキャリアがRootMetricsの情報サービスを契約しているわけではない。キャリアによっては独自のやり方でモバイル回線の性能を調査しているからだ。現状では、各国で複数のキャリアがRootMetricsの顧客となっており、日本市場はこれから。「まずは回線性能の調査で日本に進出した。日本の調査データには価値がある」(Brady氏)
キャリア向けの情報のほかに、一般消費者向けに分かりやすいレポートを提供していることもRootMetricsの特徴とBrady氏は言う。「膨大なテストデータを、シンプルで分かりやすい100点満点のスコアに落とし込んでいる。スコアを見るだけで、消費者は個々のキャリアを比較できる」(同)
指標は6つあり、「総合パフォーマンス」「ネットワークの信頼度」「ネットワークスピード」「データ通信」「通話」「SMS」となっている。「どれかの指標が消費者にとって特に重要なのであれば、その指標でナンバーワンのキャリアを選べばよい」(Brady氏)