日本オラクルは、人事業務にテクノロジを活用するHR Techに取り組んでいる。人事にもテクノロジの活用が始まっているが、人事部門で活用するために必要なことや、日本オラクル自身がテクノロジを活用した人事業務をどのように実施しているのかを明らかにした。
日本オラクル株式会社 クラウド・アプリケーション事業統括 ソリューション・プロダクト本部 HCMソリューション部 部長 津留崎厚徳氏
営業として多くの企業の人事部門と接している日本オクラル クラウド・アプリケーション事業統括 ソリューション・プロダクト本部 HCMソリューション部 部長の津留崎厚徳氏は「HR Tech関連のニュースを見ると、社員のかわりに人工知能(AI)が採用権を持つといったSFのような面白い話が多い。それに比べるとオラクルはもう少し保守的に考えている。それは多くの企業の人事担当者の方と接していて、ニーズ、課題は実は昔から変わっていないと感じる」と流行に乗るのではなく、企業の本質的な課題解決につながる提案を行うことがオラクル目指す方向だと説明する。
日本オラクル株式会社 執行役員 人事本部長 遠藤有紀子氏
実際にオラクル製品を活用し、人事業務を行っている日本オラクル 執行役員 人事本部長の遠藤有紀子氏は「根本は変わっていないことは津留崎の指摘通りだが、企業を取り巻く環境は大きく変わっている。例えば求められるスピードは10年前とは全く異なり、それに対応するにはITの力を最大限に使った新しい人事業務が必要」と新たな課題解決にテクノロジが不可欠であると指摘。テクノロジーをフル活用した、新しい人事の取り組みを紹介した。
HR Techを実践する大前提として津留崎氏は、「人事データは機密性が高く、同じ人事部に所属していても採用、異動、給与計算、研修など担当ごとに情報が共有されないケースがほとんど。例えば採用前の情報と採用後の情報が共有されない。これではテクノロジの活用も進まないので、まず人材情報を集約し、統合した情報を共有するスタイルへ変革することが必要」という。
日本オラクル自身の人事業務も、人材不足、社員多様化への対応、少子高齢化社会への対応、企業存続リスクといった課題を持つ。また、働き方としてもグローバルなバーチャルチームによって仕事を進めるケースや、生産性向上、組織力強化といったことにも対処する必要がある。
「10年前の人事部門に求められていたのは省力化。自動化によって業務効率することが強く求められていた。現在、最も求められているのは戦略的人事業務。省力化によって事務処理、周辺業務に取り組む時間を減らし、知恵を使って戦略的な人事業務を行うことが求められている」(遠藤氏)
戦略的人事とは、プロセスや制度中心の人事から、テクノロジを活用することで「経営にプラスとなる正確な情報を、経営陣が求めるタイミングで提供することが必要となる。現在の状況、将来の予測、対策を提案する」(遠藤氏)という。
経営にプラスになる提案とは、組織の状態を客観的に計測し、将来の予測を立てることや、タレントマネジメント、SNSなどをツールとして活用した人材確保などを指す。人事部門が経営をサポートする役割を担うことになる。
こうした人事のための仕組みは世界共通だ。「各国の法律に合わせなければならないといった部分は、運用面で対応する仕組みにしている」(遠藤氏)