DNAは、アメーバから、人間や恐竜、タンポポに至るまでの、ありとあらゆる生命を作り出す情報の源だ。そういった点でDNAの柔軟性には目を見張るものがある。しかもそのサイズは極めて小さく、あらゆる生命に必要な情報すべてが、わずか数ミクロン程度の細胞1つに収まるほどだ。
DNAは生命の青写真を格納する手段として数十億年前から存在している。その一方で現代の研究者らは、デジタルデータのストレージ媒体としての可能性に目を向け始めている。
一部の大手IT企業は既に、DNAを活用したデータの長期保存に向けた研究に着手している。例えばMicrosoftは7月、ワシントン大学(UW)との共同研究において、DNA上にOK Go!のプロモーションビデオや世界人権宣言を含む、200Mバイトのデータを保存した後、そこから元のデータを取り出すことに成功したと発表した。
ワシントン大学のコンピュータ科学及び工学部でDNAストレージを研究しているJames Bornholt氏は米ZDNetに対して、「われわれはストレージ分野におけるすう勢の変化があると考えるに至った。というのも、ストレージ媒体はわれわれの期待に応える成長を見せていないためだ。DNAは非常に密度の高いストレージ媒体であるとともに、耐久性といった面でも非常に興味深い特性を備えている。このため、ストレージ媒体としてのDNAの可能性を追求してみることにした」と述べた。
細胞内に存在するストレージ媒体は顕微鏡でないと見ることができないくらい小さく、磁気テープやSSDといった従来型のストレージに比べると記録密度という点で大きなメリットがある。ワシントン大学の研究者らによると、DNAを用いたストレージ媒体が実用化された暁には、最近オレゴン州に建設されたFacebookのコールドストレージデータセンターに保存されているデータすべてを角砂糖1個分の容積に収められるようになるという。
またDNAには他にも利点がある。これは、われわれが現時点で記憶媒体として利用できると認識しているもののうちで、最も古くから存在している。このため、適切な方法で保存されており、読み取り方法が分かっているのであれば、書き込んでから数千年後でもデータを復元できるのだ。
DNAは、糖リン酸の幹から枝のように伸びたアデニン(A)やチミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)という4種類の塩基が水素結合で互いにつながりあうという極めて単純な構造をとっている。単純とはいうものの、科学者らはこういった塩基の並びを読み取ることで、1と0の並びを使用する従来のコンピュータストレージと同じような情報の符号化と復号化が可能になるのではないかと考え始めている。
DNAは4つの塩基を基本にしており、コンピュータの2進数は0と1という2つの状態を基本にしているため、デジタルデータをDNA向けに符号化するのは0と1をAとT、G、Cに変換するという比較的単純な手順となる。
DNAが長期保存やアーカイブといった目的で利用される日が来るのも近いかもしれない。
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