「以前は『IT部門が事業に貢献する』と言っても、『何ができるの?』と言われた。今では、IT部門が提案したシステム案件が20件以上進行している。言われたことだけをやる受け身の組織ではなく、プロアクティブに業務部門に働きかけて事業の差別化に貢献できる組織になった」――。
ニコン 執行役員 ITソリューション本部長 鈴木博之氏
ニコンの執行役員でITソリューション本部長を務める鈴木博之氏は10月6日、ガートナー ジャパンが開催したイベント「Gartner Symposium/ITxpo 2016」で講演し、ニコンのIT部門の変遷について解説した。ITソリューション本部はニコンのIT部門で、IT企画などを担当している共通部門だ。
ニコンのIT部門が現在の姿になるまでには、長い道のりがあった。以前は外部ベンダーに丸投げしていたという。フェーズ1ではまず、IT方針の制定など、IT組織としての基礎を固めた。フェーズ2ではITガバナンスを強化した。フェーズ3ではIT部門を統合し、ビジネス貢献を拡大した。
特に、2014年6月に、それまで事業部ごとに独立していたIT部門を1つに統合したことは、大きな変革だった。
IT部門内ではそれぞれの担当事業ごとに事業チーム制を採るが、所属はIT部門となる。所属をIT部門に置くことで、事業を横断して共通化と標準化を図ることができ、全体最適を実現できる。また、他のIT部員からの技術支援を受けられる。
ITガバナンスに注力、5つの会議でITをコントロール
ITガバナンスについては、IT会議体によるガバナンス、IT投資ガバナンス、グローバルガバナンスの3つに取り組んだ。
IT会議体は、ITソリューション本部内に、ITアーキテクチャ会議とITイノベーション会議を置く。ITソリューション本部の外部には、経営レベルでIT戦略やIT投資を審議するIT戦略委員会と、他部門などと合意を形成するIT推進会議、事業部門とのプロジェクト運営を推進するプロジェクト・ステアリングコミッティがある。
IT投資のガバナンスでは、投資を抑制すべき案件から、投資を増やすべき案件へと、投資を移動する。このための策として、PDCAのライフサイクルを回し、投資効果を最大化する。さらに、プロジェクトにオーナーシップ制を導入し、事業部とIT組織の責任と役割を明確化する。
グローバルガバナンスは、全体統制のためのIT推進会議と、事業視点に立ったチーム制度を組み合わせて実現する。具体的には、事業ごとのIT統制は、チーム制によって事業部門とIT部門を一体化させている。一方、全体IT統制や地域IT統制については、IT推進会議を通してIT方針などについて合意を形成する。