アクセンチュアは11月4日、都内で会見し、福島県会津若松市が開始したプロジェクトでIoTデータを医療分野に活用する実証実験の内容を説明した。2016年度は、IoTセンサを利用する市民モニター100人を募集し、医療関連データの収集に注力する。実験では、データ活用のルールやITシステムの要件、ビジネスモデルなどを検証する。
会津若松市は、総務省の支援を受けて、IoTデータを医療分野に活用する実証実験「会津若松スマートウェルネスシティ IoTヘルスケアプラットフォーム事業」に取り組んでいる(図1)。アクセンチュアは、実証実験の全体調整やシステム構築を手がけている。NECなど各社がセンサやアプリケーションなどの提供で同プロジェクトに参加している。
図1:会津若松市によるIoTヘルスケアプラットフォーム実証事業の全体像
活動や睡眠、服薬をセンサで可視化
モニター参加者が2016年度に利用できる情報サービスは、大きく2つある。1つは、IoTセンサを用いた健康情報の計測と可視化だ。Garmin製のスマートウォッチで心拍数や歩数、移動距離、消費カロリーなどの活動データを収集する。また、ベッドにセンサを付けて、呼吸や体動、いびきといった睡眠中のデータを測定する。さらに、薬箱に付けたセンサが箱の開閉を感知し、薬やサプリメントの飲み忘れを知らせる。
利用できるもう1つの情報サービスは、モニター自身のプロフィール情報などを登録することで利用できるウェブアプリケーションだ。例えば、クックパッド子会社のおいしい健康は、同プロジェクトのプラットフォームから健康診断データやその他の健康状態データを取得した上で、モニターの健康状態にあわせた献立を作成して提示する。また、損保ジャパン日本興亜ひまわり生命は、モニターが登録した関心分野にあわせて健康情報を配信する。
会津若松市が市民向けに提供しているポータルサイト「会津若松+(あいづわかまつプラス)」からも、パーソナライズ画面を介して、今回のIoTによるヘルスケアプロジェクトで収集するIoTセンサのデータ(活動、睡眠、服薬)や健康診断データを確認できるようにする。
100人を募集したモニター参加者の内訳は、8割が男性で2割が女性。20代が約10%、30代が約15%、40代が約40%、50代が約18%、60代が約16%。次年度はモニター数を数千人規模にしたいとしている。ポータルサイトには、約12万人の市民のうち約2万人がユーザー登録している。
アクセンチュア 公共サービス・医療健康本部 ヘルス&ソーシャルケアデザイングループ統括 マネジング・ディレクター 武内和久氏
ルール整備、ITシステム、ビジネスモデルなどを検証
今回のIoTプロジェクトは、3つのステップで構成する。第1にデータを収集して蓄積する。第2にデータを共有して連携させる。第3にデータを活用して価値を創出する。
このうち2016年は、第1と第2のステップを検証する。最終的に、実証実験の成果として、ルールの整備方法を明らかにするとともに、データベース構築ノウハウやビジネスモデルなどを作成する。さらにステークホルダーの取り込みや人材育成などを実施する。
アクセンチュアで公共サービス・医療健康本部ヘルス&ソーシャルケアデザイングループ統括マネジング・ディレクターを務める武内和久氏は、今回のIoTプロジェクトの意義を「国の支援の下で民間、自治体、大学、病院、薬局などが組む、初めての試み」とアピール。「医療や健康分野のデータは、ひとつひとつが独立している。これを共通プラットフォーム化して共有、連携できるようにする。こうしたデータドリブンのアプローチが今後の医療政策になる」(武内氏)